意外と知らない「人口減少後」の日本の姿、その正体

AI要約

人口減少日本で何が起こるのか――。多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態を描き出している。この国の「社会の老化」は進んでいた。

2020年の東京都の人口動態を通じて、男女の転入・転出の違いが明らかになる。特に若い女性の東京集中が顕著であった。

意外と知らない「人口減少後」の日本の姿、その正体

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。

 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

 コロナ禍において全国的な人の動きはどうなっていたのだろうか? 

 総務省の「住民基本台帳人口移動報告」(2020年)をチェックしていくと、その輪郭が浮かび上がってくる。そこから見えてくるのは人口減少後の日本の姿である。

2020年の東京都は感染が拡大した5月以降、6月を除いて12月までの計7ヵ月にわたり転出超過が続いたが、これを男女別にすると、東京都と地方圏の関係が鮮明に表れる。

 最初の緊急事態宣言が発出された4月の東京都への転入超過数は、女性が男性の3・5倍に上る。前年同月比でみると男性は4892人から1001人へ80%減となったのに対して、女性は8181人から3531人へ57%減にとどまったためだ。

 なぜこれだけの開きが生じたかといえば、東京都への転入者の大半が20代前半だからである。女性の場合、地元に希望する就職先がないために上京するケースが少なくない。こうした人々は、東京都の感染者数が多いからといって簡単に就職先を変更できるわけではない。感染リスクよりも就職先の確保を優先せざるを得ないということだ。

 男性は、女性に比べれば地元で正規雇用の仕事を見つけやすい。就職をめぐる男女の状況の違いが、数字の大きな開きとして表れたということである。

 女性の東京流入の勢いの強さは、その後も続いた。東京都が転出超過に転じた5月は男女とも転出超過となったが、男性860人に対し、女性は4分の1の209人にとどまった。緊急事態宣言が明けて揺り戻しが起きた6月は、男女とも転入超過に戻ったが、男性438人に対し、女性は2・8倍の1231人だ。

 7~12月は再度、男女とも転出超過となったが、どの月も男性の数字が大きい。男性は感染状況を見て地元に残る人、東京を離れる人が多く、女性は上京する人、東京に残る人が多いことを窺わせる。東京都にとどまる女性が多かったのも、雇用環境の悪化が要因だ。コロナ不況は飲食業などに甚大な影響を及ぼし、女性の雇用が著しく悪化したが、それに加えて地方経済の落ち込みが激しかった。地方に戻ったら余計に仕事を見つけづらく、東京にとどまり続けるしかなかった人が多かったのである。

 転入超過数を男女比で計算してみると、女性のほうが多いのだが、2020年は223%となり前年より88ポイントもの激増となった。コロナ禍はむしろ若い女性の東京集中を促したということである。

 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。