平成でタガが外れた日本財政 「日本には資産があるから大丈夫」そんな根拠なき楽観論に物申す

AI要約

平成の日本は財政規律が弛緩し、借金が急激かつ雪だるま式に膨らんでいった。高齢化や少子化により構造的な赤字が続き、公債の発行で穴埋めされてきた。

危機が起こるたびに財政依存が深まり、コロナ禍でも巨額の財政出動が行われた。政治家はバラマキ合戦に明け暮れ、財政規律が弛緩している状況が続いている。

日本は先進国の中で財政規律に無頓着であり、返済計画も存在しない。他国では増税や歳出削減策が盛り込まれた財政計画が議論されているが、日本にはそれがない。

平成でタガが外れた日本財政  「日本には資産があるから大丈夫」そんな根拠なき楽観論に物申す

財政規律が弛緩し、借金が急激かつ雪だるま式に膨らんでいった平成の日本。財政楽観論や減税論に惑わされず、構造的な改革を断行していくべきだ。「Wedge」2024年6月号に掲載されている「平成全史 令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史」記事の内容を一部、限定公開いたします。 日本の借金が急激かつ雪だるま式に膨らんだのは、平成の時代が始まってからである。高齢化による社会保障費などの歳出が増え続ける一方、税収はバブルが崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はいわゆる「ワニの口」のように開いた。しかも、少子化により税の担い手が減り続けているから、まさしく、「開いた口が塞がらない」という構造赤字が続いている。その穴埋めは公債の発行で賄われてきた。

 さらに、平成は、リーマン・ショックや東日本大震災など、大きな危機が起こるたびに、財政依存を深めてきた。これは、令和になっても踏襲され、コロナ禍での10万円の特別定額給付金をはじめ、年間の国家予算に匹敵する100兆円以上に上る巨額の財政出動を行った。

 もちろん、有事の財政出動は、あって然るべきだが、問題はその規模感である。さらに問題なのは、平時の財政規律までもが弛緩し、今や各種の世論調査で国民の6~8割が「こんな財政運営でよいのか」と不安視しているのに、政治家はバラマキ合戦に明け暮れて、タガが外れた状況が続いている。

 元財務官僚として、反省の弁を述べなければならないが、日本ほど財政規律に無頓着な先進国は存在しない。なぜなら、日本以外の先進国では、例えば経済対策の実行で財政出動する場合、財源の確保はセットで議論されるからだ。

 コロナ禍の対策にあたって、英国では増税・歳出削減策を盛り込んだ新たな財政計画が公表され、独・仏でも償還計画が明らかにされている。米国では富裕層や大企業に対する課税強化などにより、財政赤字を今後10年間で3兆ドル近く削減する案が提案された。

 そもそも、ドイツでは憲法で均衡財政が規定され、米国ではペイ・アズ・ユー・ゴーという財源確保ルールが法定されている。そんな中、日本には、返済計画が全くないのである。

 これだけ財政規律が緩く、先進国でずば抜けて大きな借金を抱えているのに、日本では財政楽観論や減税論などがいまだに跋扈している。だが、そうした夢物語の中で、私が特に危惧するものとして「日本政府には資産があるから大丈夫」という議論、「基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化」の議論について、指摘したい。