中国新興EV「理想汽車」、追随値下げで営業赤字に転落 過当競争に巻き込まれ、利益重視を維持できず

AI要約

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車(リ・オート)が2024年1~3月期の決算を発表。EVの販売台数が前年比52.9%増の8万400台で売上高は同36.4%増の256億元に達した。

経営理念に基づき、高級ブランドのイメージ作りを重視してきたが、業績に厳しい試練が訪れる。営業損益が赤字に転落し、価格競争による影響が顕著になっている。

新型EV車種の市場投入を延期し、急速充電装置の整備に注力する姿勢を見せる理想汽車。競争環境の中で今後の経営戦略が問われる状況にある。

中国新興EV「理想汽車」、追随値下げで営業赤字に転落 過当競争に巻き込まれ、利益重視を維持できず

 中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車(リ・オート)は5月20日、2024年1~3月期の決算を発表した。EVの販売台数が8万400台と前年同期比52.9%増加したことにより、1~3月期の売上高は同36.4%増の256億元(約5519億円)に達した。

 理想汽車は創業当初から利益率を重視し、高級ブランドのイメージ作りに注力してきた。その結果、2023年には中国の新興メーカー群の先頭を切って通期純損益の黒字化を実現した。

 ところが今、同社の経営は厳しい試練に直面している。1~3月期の調整後純損益は13億元(約280億円)の黒字だったものの、本業のもうけを示す営業損益が5億8000万元(約125億円)の赤字に転落したのだ。

■経営の迷走ぶりが露呈

 理想汽車の営業損益は、直前の2023年10~12月期は30億元(約647億円)の黒字だった。そこから大幅減益となった主因は、中国EV市場の激しい価格競争に巻き込まれたことだ。2024年1~3月期には、市場シェア首位の比亜迪(BYD)や第2位のテスラが値下げに踏み切り、理想汽車も(顧客離れを防ぐために)追随を余儀なくされた。

 同社は新ジャンルの高級ミニバン「MEGA」を3月1日に発売するまで、価格競争には消極的な姿勢をとっていた。しかしMEGAの販売は振るわず、3週間後の3月21日に2024年1~3月期と通年の販売目標の下方修正を発表した。

 さらに4月18日、理想汽車は新型SUV「L6」を発売。ところが、わずか4日後の4月22日にL6を除く全車種の大幅値下げを発表するなど、経営の迷走ぶりが露呈した。

 理想汽車はもともと、2024年を成長加速の「ビッグイヤー」と位置づけ、MEGAとL6に加えて3車種の新型EVの発売を予定していた。

 しかし、同社の創業者で董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)の李想氏は、これら3車種の発売を2025年に延期したことを決算説明会で明らかにした。

 「現在の市場環境下で高価格帯のEVを売るには、(充電に関する顧客の不安を和らげるために)十分な数の急速充電装置を自社で整備することが必要だ」

 李想氏はそう述べ、(自社運営の充電ステーション設置で先行する)テスラに近い水準まで急速充電装置の数を増やしたうえで、新型車を市場に投入する考えを示した。