新紙幣20年ぶり発行、準備に温度差…進むATMやレジの改修・小規模事業者は負担重く急がず

AI要約

新紙幣の発行まで1か月を切り、金融機関や小売店では対応を急ぐ様子が伺える。

メガバンク3行は既にATMや両替機での対応を終えており、他の業種も急ピッチで改修作業を進めている。

全ての業種が7月3日に対応するわけではなく、特に小規模事業者には負担がかかっている。

 20年ぶりとなる新紙幣の発行まで1か月を切った。金融機関や小売店では現金自動預け払い機(ATM)やレジの改修を急いでいる。コロナ下にキャッシュレス決済が普及したほか、小規模事業者には負担も重く、対応を急がない例もあるようだ。(岡田実優、貝塚麟太郎)

 三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行はすでに、全国のATMと両替機で新紙幣の対応を済ませた。新しいお札が発行される7月3日から入金は可能になるが、当日中にどの店舗で入手できるかは未定だという。

 前回の2004年11月1日は、お札を交換したいという客のために、1人あたりの交換できる枚数を決めるなどして、対応した。

 首都圏の公共交通機関では、東急電鉄が3月中に、300台以上の券売機で対応を終えた。西武鉄道も5月に改修を済ませ、JR東日本は6月までの完了を目指している。

 小売り大手では、食品スーパーを展開するイオンリテールが新紙幣の発行までにシステム改修を終える予定だ。セブン―イレブンも切り替えと同時に利用できるようにする。

 両替機や自動販売機を製造、販売する三幸無線(静岡県沼津市)には、昨年末から対応する製品への引き合いが増えている。

 すべての対応が7月3日に間に合うわけではない。飲食店のような規模が小さい事業者には負担もかさむ。

 東京・神田にある「定食屋いち」は、作業の効率化を図るため、会計を券売機で行っている。現在の設備は数十万円で購入したという。店長の女性(57)は、「コメや油の価格も上がっており、券売機の買い替えは正直、痛い。やりくりして何とか対応したい」と肩を落とす。

 自販機も、一斉の切り替えは難しい。飲料の自販機は全国に約220万台あって、1台ごとに紙幣を読み取る部品を交換しなければならない。飲料大手の担当者は、「すべてが完了するには2年程度かかるのではないか」と話す。

 ATMや自販機メーカーなどで作る日本自動販売システム機械工業会は新紙幣の発行に間に合いそうな機器の割合について、ATMは9割以上、小売店のレジや公共交通機関の券売機は8~9割とみている。一方で飲食店の券売機や駐車場の精算機は5割、飲料の自販機は2~3割と見込む。