物流危機で注目「ダブル連結トラック」 これを“2台分の手積み&手卸し”と考えるドライバーは時代遅れだ! 有効活用を直視せよ

AI要約

センコーは、2030年に100編成のダブル連結トラック運行を目指す。これにより、年間16万6000時間の省人化と6600tの二酸化炭素削減が見込まれる。

しかし、ダブル連結トラックの運行には通行許可手続きが必要であり、手間がかかっている。政府も特殊車両通行制度の見直しを考えているが、課題は残る。

センコーは自社で教習所を運営し、ドライバーの育成にも力を入れている。

物流危機で注目「ダブル連結トラック」 これを“2台分の手積み&手卸し”と考えるドライバーは時代遅れだ! 有効活用を直視せよ

 センコーでは、自社で行うダブル連結トラックの運行を、現行の8編成から、2030年には100編成まで増やすことを目指している。100編成体制を達成すれば、年間で約16万6000時間・約59名分のドライバー省人化を実現するという。数あるドライバー不足対策のなかでも、効果が大きく、即効性も高い対策といえよう。さらに、二酸化炭素排出量は年間約6600t抑制可能であり、グリーン物流の実現にも大きく貢献できる。

 センコー 常務理事・殿村英彦氏は、ダブル連結トラック運行時の課題について、

「通行許可等の申請にかかる手間」

を挙げる。前編の記事「物流危機の今、なぜ「ダブル連結トラック」が注目されるのか? “2台分輸送可能”だけじゃないその実力、しかし「駐車場不足」という大問題も」(2024年6月6日配信)でも説明したとおり、そもそもダブル連結トラックの運行には、さまざまな条件が課されている。主として六つある条件をクリアし、ダブル連結トラック運行の申請を行った後に待っているのは、道路の通行許可手続きである。

 ダブル連結トラックに限った話ではないが、一定の大きさや重さを超える車両は、道路法 車両制限令に基づき、あらかじめ道路管理者の通行許可または通行確認が必要となる。特殊車両通行制度に基づく通行許可の申請手続きについては、いわゆる“お役所仕事”の典型であり、その手間には、多くの運送事業者が閉口させられてきた。

 政府も「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月発表)において、「特殊車両通行制度に関する見直し・利便性向上」を施策として挙げているものの、ことドライバー不足対策の切り札たるダブル連結トラックの運行時にさえ、いまだに通行許可の取得に苦労させられているのだ。

 ドライバーの育成はどうなのか。

「センコーでは、滋賀県内に大型自動車免許の指定教習所を所有していますので、ダブル連結トラックの運行に必要な教習も自社で行っています」(殿村氏)

 ダブル連結トラックの運行は、車両を購入すればそれで運行開始できるというものではない。通行許可申請、ドライバーの育成に加え、ダブル連結トラックの運用に適した物流センター・営業所も必要となる。

 また、ダブル連結トラックについては、車両整備のノウハウも、従来のトラックとは少し変わってくる。前編で紹介したネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、東京都新宿区)では、トラクタ(けん引する側の車両)とトレーラー(けん引される側の車両)をつなぐドリーの連結部分(ピントルフック)の摩耗について、独自の安全基準を持っているという。

 こういった事情を鑑みれば、国内運送会社の大多数を占める中小運送会社が、ダブル連結トラックの運行を行うのは、相当難しい。国内の運送会社は、従業員数20人以下の中小企業が71.4%を占め、逆に従業員数が1000人を超える大企業は、6万3000社強の運送会社のうち、72社しかないのである。