利下げへ動き出す世界 カナダ、欧州に続き米国も近づく政策転換

AI要約

主要な中央銀行が金融政策を見直し、利下げの転機に入った。欧州中央銀行やカナダ中銀などが高インフレへの対応として利上げを続けていたが、インフレの鈍化を受けて利下げに踏み切った。日本銀行は逆行する動きを見せている。

世界経済の回復やエネルギーや食料の価格高騰によるインフレ率の鈍化が背景にあり、高インフレ・利上げ競争の終焉が近いとされている。これまでの政策転換は重要な意味を持つ。

次なる焦点はFRBの動向であり、利下げの可能性が濃厚だが、金利差拡大が是正される可能性や円安ドル高の流れが変わる可能性がある。しかし、米欧の中央銀行と日本銀行が同時期に逆方向の金融政策を行う例は過去になかった。

利下げへ動き出す世界 カナダ、欧州に続き米国も近づく政策転換

高インフレへの対策で利上げを続けてきた主要な中央銀行の金融政策が転機を迎えている。3月のスイス、5月のスウェーデン、今月5日のカナダに続き、6日には欧州中央銀行(ECB)が利下げに踏み切った。米連邦準備制度理事会(FRB)も年内に追随する可能性がある。日本銀行の追加利上げは世界の潮流と逆行する動きとなりそうだ。

■高インフレは終焉

「インフレの見通しは著しく改善した」。ECBのラガルド総裁は6日の理事会後、4年9カ月ぶりとなる利下げ理由をこう説明した。

2022年以降、世界経済は新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復と、ウクライナ危機に伴うエネルギーや食料の価格高騰に直面。ユーロ圏では、22年10月に10%を超える猛烈なインフレに見舞われた。

これに対処するため、ECBは23年9月まで10会合連続で利上げ。その後は5会合連続で政策金利を据え置いてきた。急ピッチの利上げの効果もあってユーロ圏のインフレ率は、24年5月には2・6%まで鈍化した。

ECBやカナダ中銀が相次いで政策を見直している状況について、大和証券の鈴木雄大郎エコノミストは「高インフレ・利上げ競争の終わりが近いという意味で重要な変化だ」と指摘する。

■円安ドル高反転なるか

次の焦点はFRBの動向だ。日本時間13日未明の米公開市場委員会(FOMC)では利下げを見送る可能性が濃厚だが、年内には決断するとみられる。FRBのパウエル議長が、個人消費や雇用についてどのような見方を示すか注目される。

FRBが利下げに転じれば、日本との金利差拡大が是正され、円安ドル高の流れが「転換するきっかけとなることが期待される」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)。

ただ、米欧の主要中銀と日銀が逆方向の金融政策を同時期に行ったことは「過去に例がない」(木内氏)のも事実だ。

(永田岳彦)