貴金属・宝飾品業界の売上高はコロナ禍前より20%増加

AI要約

2024年5月21日、金(ゴールド)の国内小売価格が1万3,477円/g[1] となり過去最高値を更新(6月6日時点)した。またダイヤモンドやプラチナ、シルバーの価格も高騰しており、宝飾品価格が上昇している。

帝国データバンクがコロナ禍前後の貴金属・宝飾品業界を分析した結果、貴金属・宝飾品DIの動きを示している。それによると、2020年の緊急事態宣言により販売機会が激減し、同業界の景気DIが低迷したが、2022年から回復基調に入っている。

現在の状況では、円安やインフレ傾向、素材価格の高騰などが業界全体に影響を及ぼしており、貴金属・宝飾品DIは踊り場局面にあり、今後の展望は不透明である。

貴金属・宝飾品業界の売上高はコロナ禍前より20%増加

2024年5月21日、金(ゴールド)の国内小売価格が1万3,477円/g[1] となり過去最高値を更新(6月6日時点)した。またダイヤモンドやプラチナ、シルバーなどの価格も高騰。それにともない宝飾品価格が上昇している。こうした中、百貨店での「美術・宝飾・貴金属」の売上高[2] は、2023年度は5,143億6,143万円となり、コロナ禍前の2019年度(3,760億7,778万円)に比べ36.8%増と大幅に改善。2024年度に入ってからも好調を維持している。

そこで帝国データバンクでは、コロナ禍前後の貴金属・宝飾品業界を取り巻く環境や景気DI [3]の動きを分析した。

帝国データバンクが毎月実施しているTDB景気動向調査で算出した貴金属・宝飾品DI [4]の推移をみると、2020年4月に緊急事態宣言が発出されたことで販売機会が激減し、同年2Q(4~6月)には全産業の景気DIを18.4ポイント下回る7.8まで下落した。

2021年9月末に全対象地域の緊急事態宣言が解除されたことで、同年4Q(10~12月)の全産業の景気DIは42.8にまで回復したが、贅沢品である貴金属・宝飾品の販売回復は遅れ、同業界の景気DIは27.9と、全産業の景気DIを14.9ポイント下回った。

しかし2022年3月にまん延防止等重点措置が終了し、経済活動が再開に向かったことで、貴金属・宝飾品DIの回復ペースは上がり、2023年1Q(1~3月)に38.4まで回復。2023年4Qには42.6と過去最高を更新し、全産業の景気DI(44.8)との差は2.2ポイントに縮小した。金の価格高騰、百貨店での「美術・宝飾・貴金属」の売上高が好調な一方で、2024年1Qの貴金属・宝飾品DIは41.3にとどまり、全産業の景気DIを下回る状況が続いている。

円安による旺盛なインバウンド需要や客足増加で景況感が回復している一方で、地政学的リスクの高まりやインフレ傾向を背景に2022年から続く金やダイヤモンドなどの素材価格の高騰により仕入価格が上昇し業績を圧迫している企業もある。同じ業界の中でも為替相場やインバウンド需要の恩恵を受ける企業とそうでない企業で格差が生じているようだ。

今後については、過去に類をみない物価高騰の中、賃上げ効果を実感できるまでにはしばらく時間を要する可能性があるため、購買の中心は外国人旅行者、富裕層、投資家などに限られ、全体の底上げは期待できないだろう。

また、相場価格の動向が経営に大きく関わってくるため、素材価格の高騰が損益面でのマイナス要因となるケースも考えられ、貴金属・宝飾品DIは踊り場局面が続きそうだ。

[1] 金(ゴールド)の小売価格は、地金商最大手の田中貴金属工業の公表数値

[2] 日本百貨店協会の「百貨店売上高(商品別売上高)」より

[3] 景気DIは、TDBが算出する全国企業の景気判断を総合した指標。50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる

[4] 貴金属・宝飾品DIは、「貴金属製品製造」「貴金属製品卸売(宝石を含む)」「貴金属製品小売(宝石を含む)」などの景気DIを3カ月移動平均で算出