進む教育データ利活用とラーニングアナリティクス――ICT活用教育の最新トレンド

AI要約

文部科学省が教育データ利活用の方策についてまとめを公表

教育データの活用が進む中、教員研修におけるデータ活用が注目されている

玉川大学で教員の授業デザイン改善に教員と生徒の活動定量的分析を行う実証研究

進む教育データ利活用とラーニングアナリティクス――ICT活用教育の最新トレンド

 文部科学省は2024 年3月29日、「教育データ利活用の実現に向けた実効的な方策についての議論のまとめ」を公表した。学習者の活動履歴やテスト結果などの教育データは、ラーニングアナリティクス(学習分析)などの手法により、教員の指導方法や教材の改善、学習者個人に合った学習方法の選択、教育政策の立案などに役立つと考えられている。

 「教育データの利活用に関する有識者会議」が2021年に「中間まとめ」を公表して以降、データとエビデンス(根拠)に基づく教育政策(EBPM)が意識され、先進的な自治体では「教育ダッシュボード」の実証や導入が始まった。ラーニングアナリティクスも一定の研究成果が出てきている。2024年3月には、この分野で最大級の国際学会「LAK*」が国内で初めて開催された。

*Learning Analytics and Knowledge Conference

 教育データに対する期待が高まる一方で、教育現場での活用はそれほど進んでいない。児童・生徒の学習データを集めること自体が簡単ではなく、データを分析するツールやプラットフォーム、人材の不足も課題だ。そうした中でも比較的早く実用化が期待できそうなのが、教員研修におけるデータ活用だ。授業の様子を記録した映像や音声を分析し、教員の指導に対して学習者がどのように反応したのかを分析する(図1)。教員研修などで自身の授業を振り返る際、記憶や映像だけでなく、データを使って確認できる。

 玉川大学 ICT教育研究センターは文部科学省の事業において、「学びの活動定量的分析」を教員にフィードバックして授業デザインを改善する実証を、玉川学園中等部・小学部で実施した。授業中の教室を撮影し、顔情報を基に児童・生徒と教員の動きを記録。データから両者の活動を分析する仕組みだ。NECバイトメトリクス研究所が技術を提供した。

 図2左は、新任3年目の教員とベテラン教員の授業を比較したデータだ。時系列のグラフの青い線は、前方のカメラで検出された顔の数。つまり、前を向いている人数を意味する。それが落ち込んでいる箇所は、子供たちが隣の人やグループで話し合いをするなど、前方を注視する状況とは異なる学習活動を示している。

 若手教員の授業では、青の線が一定の範囲で上下している。これに対してベテラン教員の授業は、学習者が前を見ている時間帯とグループ活動などをしている時間帯が明確に分かれている。学習活動の切り替えが迅速で、メリハリのある授業と表現してもよいだろう。実証研究を率いた玉川大学工学部 名誉教授・脳科学研究所 特別研究員の大森隆司氏は、「授業中の活動が多様になる中、学習者の動きを分ける『活動の分節化』が重要になっている」と指摘する。