「SiC半導体」製造用で強い需要…東洋炭素、等方性黒鉛で攻勢

AI要約

東洋炭素が半導体製造用の等方性黒鉛の素材製造で攻勢をかけており、2024年までに素材製造能力を約3割増やす計画を進めている。

需要が急増している半導体ウエハー関連部材の製造に注力し、投資額も増加している。

生産技術の向上や自動化にも取り組むなど、売上高880億円達成に向けて施策を進めている。

東洋炭素が半導体製造用で需要が増える等方性黒鉛の素材製造で攻勢をかけている。現在、香川県の工場などで設備増強中で、2024年内に素材製造の能力は19年比約3割増える計画。24―28年度の中期計画期間中の設備投資額は、23―27年度比約49%増の計765億円に増額した。素材製造に加え、高純度化、化学処理などの能力も強化し、半導体製造装置用部材を増産。28年12月期売上高を24年同期計画比約1・6倍の880億円に引き上げる計画だ。(大阪・岩崎左恵)

東洋炭素は等方性黒鉛の素材製造から高純度化や加工、化学処理まで一貫で製造できることや、直販率が高いことなどが強み。等方性黒鉛に高純度化や化学処理などを施した製品は、半導体ウエハーの結晶成長に用いる炉内部材や、ウエハーに薄膜を作るエピタキシャル装置内でウエハーを載せる「サセプター」と呼ばれる部材などに利用される。これら製品はパワー半導体に使われる炭化ケイ素(SiC)半導体の製造用で強い需要があり、市場が拡大している。

このため、すでに等方性黒鉛の素材製造の多くを担う詫間事業所(香川県三豊市)などでは18年ごろから「能力のテコ入れをしている」(高多学執行役員)といい、焼成や黒鉛化などの工程で設備を増強中。24年後半には進行中の設備増強が完成する予定だ。

24―28年度に765億円とする投資計画のうち、24年度は23年度比約2・8倍増の約160億円の投資を計画。「高水準の投資が続く」(同)と見通す。

24年後半ごろには、東洋炭素生産技術センター(同観音寺市)で、SiCエピタキシャル成長装置向けサセプターにSiCや炭化タンタル(TaC)のコーティングを施す処理炉の設備投資が完了。詫間事業所では建屋を増設し、等方性黒鉛の純度を高める処理炉の生産能力を増強する。海外子会社でも高純度処理炉を増設する。

同社は設備投資について、すでに26年まで具体的な計画を立てて進めていると明かす。27年以降についても、順次計画を検討していく考えだ。

また生産能力の増強に加え、炉と炉の間で製品を自動搬送する装置や、ロボットによる自動化や省力化にも取り組む。高多執行役員は「現在の現場は力仕事が中心。今後は女性も働くことができるような環境にもしなければいけない」との方針を示す。

働きやすい環境の整備も同時に進め、28年12月期に掲げる売上高880億円という目標の達成に向け、着々と施策を打っている。