優れたマネジャーは無秩序な組織をつくる

AI要約

牛肉の部位を組織に例えて、組織を生きた牛のように調和させる必要性について述べられている。

牛のように歩むことが組織における一体性と協力の重要性を象徴している。

リーダーシップよりもコミュニティシップが重要であるという提案がなされている。

優れたマネジャーは無秩序な組織をつくる

■生きた牛のような組織

 牛肉の部位がマネジメントとなんの関係があるんだ!

 そう思った人もいるかもしれないが、ちゃんと関係がある。

 左は、ある大手ソフトウェア企業が数年前に広告で用いたイラストだ。ここに描かれているものは一頭の牛とは呼べない。これは、言ってみれば牛の「組織図」だ。牛を構成する部位の寄せ集めでしかない。牛が元気に生きていれば、それぞれの部位はみずからが牛の一つの部位であることを意識しない。一つひとつの部位が役割を果たし、その結果、おのずと一頭の牛として全体の調和が取れる。あなたは、自分の会社を「部位の寄せ集め」にしたいのか。それとも、生きた牛のようにしたいのか。

 これは大真面目な問いだ。じっくり考えてほしい。牛は、部位の寄せ集めとしてではなく、すべてが一体を成した存在として生きることに、なんの苦労もしていない。その点は、私たち人間も同じだ。少なくとも生理学的には、そう言って差し支えない。

 なぜ、社会的にはそれができないのか。どうして、ほかの人たちと一緒に仕事をするとき、一体になって行動することが難しいのか。私たちは、どのように組織を築くべきなのか理解できていない恐れがある。組織図にこだわりすぎる姿勢もその一つの表れなのかもしれない。

 私は現役マネジャー向けの研修プログラム「IMPM」(国際マネジメント実務修士課程)で、この牛の話をする。

 ある年、インドのバンガロールでプログラムを開催したときのこと。参加したマネジャーたちは、交通量の多い道路を横切ったとき、これとは別の牛のストーリーを経験した。マギル大学(カナダ)の同僚であるドラ・クープが、そのときのことを話してくれた。 「最初の日に、インドで道を渡るときは牛のように歩けと言われました。みんながくっついて一緒に歩くこと、そして不規則な行動を取らないことが大事だと教えられたんです。言われたとおりにゆっくり渡ると、車がよけてくれた。プログラムの期間中、私たちは牛のように歩くというたとえをよく使って語り合ったものです」

 大勢の人が一体となり、ゆっくり足並みをそろえて、混沌とした状況の中を前進していく──これと同じことが組織でもできればいいのではないだろうか。

 生きた牛のような組織をつくるためのヒントは、牛のように歩くことの中にある。みんなが一体になって仕事をし、一体になって歩くことが重要なのだ。マネジメント論ではリーダーシップが神聖視されるが、それよりも重要なのは、言うなれば「コミュニティシップ」だ。これは、リーダーシップが過大評価されている状況を正すために私が考案した言葉である。