【相続放棄の手続き】必要な書類は3つ、期限は「相続発生を知ってから3か月以内」、預金を勝手に引き出すと放棄が認められなくなるので注意

AI要約

 相続放棄が増加傾向にあり、主な理由は親の多額の借金であることが挙げられる。

 相続放棄を行う際には、すべての財産を放棄しなければならず、慎重な判断が必要とされる。

 相続放棄手続きは個人でも簡単に行えるが、一定期間内に行わなければならないため注意が必要である。

【相続放棄の手続き】必要な書類は3つ、期限は「相続発生を知ってから3か月以内」、預金を勝手に引き出すと放棄が認められなくなるので注意

 いま「相続」に異変が起きている。遺産分割協議や相続税の納付に苦労するよりも、全部まとめて「放棄」する人が増えているのだ。司法統計によれば、1989年に約4万件だった全国の家庭裁判所で受理された「相続放棄」の件数は、2022年には過去最多の26万497件。30年あまりで6倍以上に激増している。

 相続放棄の理由として多いのは「亡くなった親に多額の借金があるから」というものだ。相続財産には、預貯金などの“プラスの財産”だけではなく、借金や保証人など“マイナスの財産”も含まれるため、被相続人の負債を背負いきれない場合に、相続を放棄することが多い。

 相続放棄にあたって留意すべきなのは、「預貯金は相続して、借金は放棄する」といった財産の“選り好み”はできず、すべての財産を放棄しなければいけないということ。大損しないためには、あらゆる状況を鑑みて、放棄すべきかどうか判断する必要がある。

 いざ「相続放棄する」と決めたら、その準備や手続きは個人でもすぐにできる。

 必要書類は「相続関係を証明できる被相続人の除籍謄本等戸籍一式」「被相続人の住民票の除籍謄本」「相続を放棄する人の戸籍謄本」のみ。裁判所のウエブサイトからダウンロードできる「相続の放棄の申述書」に記入し、被相続人の最後の居住地を管轄する家庭裁判所に提出するだけだ。その後は裁判所と「照会書」という書面でのやりとりを経て、問題がなければ受理される。『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』の著者で司法書士の椎葉基史さんが言う。

「受理されたら、家庭裁判所に証明書の発行を申請しましょう。負債がある場合は、それを債権者である銀行や消費者金融などに提示すれば、放棄した人に請求はこなくなります」(椎葉さん。以下同)

 家庭裁判所への申述から審査に1~2か月ほどかかるので、必要書類の準備も含めて2~3か月ほどかかるとみるべきだ。だが場合によっては、相続放棄が認められないこともある。

「相続放棄の手続きは“相続の発生を知ってから3か月以内”にしなければ認められません。期限を過ぎても放棄することは不可能ではありませんが、間に合わなかった理由を過去の最高裁の判例に当てはめて主張する必要があり、手間も時間も費用も大きいため、あまりおすすめできない。

 また、財産の中から預金を勝手に引き出したり、不動産を売ったり解約したりしていた場合も“放棄する財産を勝手に処分した”と見なされ、放棄は原則認められなくなる。亡くなった直後に、口座が凍結される前に葬儀代を急いで引き出したりするのも、厳密にはルール違反。形見の品をどこまで自分のものにしていいのかなど判断が難しい部分もあるので、迷ったら専門家に相談してください」