利回り比較で魅力失う日本株、配当と長期金利差は10年ぶりの低水準に

AI要約

国内の債券利回りの上昇が株式の配当に対する魅力を低下させ、投資家が日本株を買い増すことに慎重な姿勢を見せている。

日本の債券利回りと株式配当利回りの差が縮小しており、クロスアセット投資家に選択肢が増えている状況だ。

株式投資にはリスクが伴うことから、債券に比べて収益の見込みが高まる現状において、投資家は慎重ではあるものの、株式への投資を検討する傾向がある。

(ブルームバーグ): 国内の債券利回りの上昇が株式の配当に対する魅力を相対的に低下させており、投資家は日本株をさらに買い増すことに二の足を踏んでいる。

ブルームバーグのデータによると、MSCIジャパン指数の予想配当利回りから10年国債利回りを引いた差は1.22%ポイントと2014年以来、約10年ぶりの低水準となった。

3月にマイナス金利政策を解除した日本銀行が早期に追加利上げに踏み切るとの観測が広がる中、10年国債利回りは5月30日に一時1.1%と約13年ぶりの高水準まで上昇。一方、日経平均株価は34年ぶりに史上最高値を更新し、初めて4万円の大台に乗せたことで株価収益率(PER)などバリュエーションも上昇したことで、複数の資産を組み合わせるクロスアセット投資家にとっては選択肢が増えた。

三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、日本の債券利回りと株式配当利回りのスプレッドが狭まっており、「積極的に株式のインデックスを買えるかどうか、少し考えなければならない」と話す。

瀬良氏は、株価が急落するとは思っていないが、金利上昇は株式にとって上値の圧迫要因となるため、「もみ合いで推移する可能性の方が高い」と予想。日経平均は年末までに3万8000円-4万円の間で取引されるとみている。同レンジは3月に付けた終値ベースの史上最高値4万888円よりやや低い。

MSCIジャパン指数の配当利回りは20年3月には3.4%と高水準だったが、現在は2.3%で推移している。政府が主導するコーポレートガバナンス(企業統治)改革の流れから配当を増額するなど株主還元を強化する企業は増えている半面、ここまでの株価の高騰が配当利回りの上昇を抑制している格好だ。

セゾン投信の瀬下哲雄マルチマネジャー運用部長は「今まで債券に投資したくても、ゼロ金利でほぼ収益が得られなかったため、仕方なく株式に投資するという選択肢は確かにあった」と説明。株式投資にはリスクが伴うため、「1%でも取れれば、債券でもいいということは十分ある」と話す。