NTTドコモら、エアバス系“空飛ぶ基地局”へ出資 日本で世界初商業化へ、最大1億ドル

AI要約

NTTドコモとSpace Compass、エアバス傘下のAALTOが資本業務提携を合意し、高高度滞空ソーラー型無人機「ゼファー」の商業化を目指す。

ゼファーは空飛ぶ基地局として通信・観測サービス提供、非地上ネットワークで活用可能。

NTTドコモとSpace Compassが主導するコンソーシアム「HAPS JAPAN」がHAPS市場で先導的地位を目指し、環境問題や安全保障の解決に貢献。

NTTドコモら、エアバス系“空飛ぶ基地局”へ出資 日本で世界初商業化へ、最大1億ドル

 NTTドコモ(9437)とSpace Compass(東京・大手町)、エアバス傘下で高高度滞空ソーラー型無人機(HAPS)の「ゼファー(Zephyr)」を開発するAALTO(本社:英ファンボロー)の3社は6月3日、資本業務提携に合意した。AALTOは2社が中心となるコンソーシアム(企業連合)から最大1億ドル(約157億円)を出資を受け、世界初となるHAPSの商業化を、2026年をめどに日本国内で目指す。

 HAPSは非地上ネットワーク(NTN)のひとつで、地上約20キロ上空にある成層圏を飛行し、“空飛ぶ基地局”として地上へ通信・観測サービスを提供する。空や海上、山間部など通信環境の整っていないで場所で、高速大容量・低遅延の直接通信が可能となる。また、災害時の被災状況をリアルタイムな観測や、送電線の監視保守業務などにも活用できる。

 ゼファーは翌幅25メートル、重量75キロのHAPSで、100%ソーラー発電で駆動する。以前はエアバスグループの防衛宇宙部門エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが開発を進めていたが、現在は分社化し、AALTOが製造・運用する。2022年には無人航空機として世界最長となる64日間の滞空飛行を実現した。

 日本国内では年内から2025年にかけて通信実証を進め、2026年の供用開始を目指す。ゼファーの航空技術とNTTドコモの地上ネットワークの専門知識、エアバスの観測ソリューションを組み合わせることで、HAPSベースのNTN市場で日本が主導的な地位を確保したい考えで、グローバル展開も目指す。

 Space Compassは日本電信電話(NTT、9432)と、スカパーJSATホールディングス(9412)傘下のスカパーJSATの2社が2022年7月に設立した合弁会社で、宇宙データセンタ事業を担う。今回の資本業務は、NTTドコモとSpace Compassが主導しコンソーシアム「HAPS JAPAN」を設立。コンソーシアムにはみずほ銀行と日本政策投資銀行(DBJ)も参画する。

 ゼファーは今後、安全性を認める「型式証明」(TC)の取得へ向け、開発を加速させる。AALTOのサマー・ハラウィCEO(最高経営責任者)によると、現在は英CAA(民間航空局)、EASA(欧州航空安全局)、FAA(米国連邦航空局)と話し合いが進んでいるという。

 Space Compassの堀茂弘Co-CEO(共同最高経営責任者)によると、国内でのTC取得や電波利用などは同社が交渉役となり、国土交通省航空局(JCAB)と総務省と進めていくという。

 NTTドコモとSpace Compass、AALTOにエアバスを加えた4社は、NTNを活用し、環境問題や自然災害、安全保障などの社会問題の解決を目指す。