“臭すぎる”がカネになる「ラーメン山岡家」の業績が絶好調な理由

AI要約

ラーメンチェーン「山岡家」の急成長について。

セントラルキッチンを使わず、店ごとに仕込んだ濃厚スープが特徴。

豚骨の臭いを活かした戦略が郊外で成功している。

“臭すぎる”がカネになる「ラーメン山岡家」の業績が絶好調な理由

 観光地に行楽などで向かう道すがら、赤地に白抜きの文字で「山岡家」と大きく書かれた店舗を見たことはないだろうか。しかも、昼夜問わず、たくさんの車が駐車場に停まっているのもザラだ。

 郊外を中心に全国規模で約180店舗を展開している一大ラーメンチェーン「ラーメン山岡家」の勢いが止まらない。

 同店を手掛ける丸千代山岡家の直近の業績は、2024年1月期の既存店売上高で前期比37%増。これにより26年1月期を最終年度とする中期経営計画の業績目標値をわずか1年で達成したという。

 24年1月期の単体売上高を見ても264億円と42%増。税引き利益は14億円となり、営業利益、経常利益を含め“最高益”を達成している。

 丸千代山岡家の経営陣も強気だ。「全国47都道府県への出店、300店体制の確立」を目標に掲げており、報道によれば「10年以内に(目標を達成)できそうだ」と自信をのぞかせている。

 とはいえ、山岡家はけっしてポッと出のラーメン店というわけではない。1988年、茨城県牛久市の国道6号(水戸街道)沿いに1号店をオープンして以降、創業は16年と、ラーメンチェーンの中では比較的古株と言えるだろう。

 では、ここ最近になって、なぜ山岡家は大ブレイクに至ったのか。

 山岡家の歴史を紐解くと、創業後しばらくしして、1992年にラーメンの本場であり激戦区として知られる札幌への出店を開始する。そこから栃木、埼玉、千葉と全国展開を始めていく。

 注目すべきは、都心での展開ではなく、積極的に地方に裾野を広げていったことにある。その一番の要因として、筆者は、山岡家の「スープ」に答えがあると踏んでいる。

 店舗展開するラーメンチェーンでは、店舗数が増えれば増えるほど、「セントラルキッチン方式」を採用する傾向が強い。各店舗でスープを仕込むのではなく、1ヵ所の大きな工場でスープを作り、店舗に配送することで、どの味も同じ味になりやすい。つまりチェーンとして味の均一化が図れるわけだ。

 とはいえ、セントラルキッチン方式は、店ごとのブレが出にくい反面、出来立ての味が堪能できるという、ラーメン店としての大きな強みを失いかねない。その点、山岡家はセントラルキッチンを使っていないのが特徴だ。店舗ごとに仕込みを行い、豚骨を3日間煮込んだ濃厚スープを生み出している。

 そう、ここが一番のキモだ。店ごとにスープを仕込むということは、当然、豚骨独特の臭いが発生してしまう。住宅が隣接した都心部では、度々この仕込みで発生する「豚骨の臭い」が問題になり、これまでも多くの店が苦戦を強いられてきた。

 だが郊外、特にロードサイドなら、この問題は一気に解決する。もちろん店内に入れば、「臭い」は充満しているのだが、これが客の食欲をそそる大きなポイントとなっている。

 チェーン店は多店舗展開すればするほど、クセというものは薄らいでいく。しかし山岡家はあえてクセ=臭いを全面に押し出すことで、その存在価値を高めているのだ。