米軍撤退後のニジェールに急接近 ロシアの思惑とは?

AI要約

アメリカ国防総省は、西アフリカのニジェールに駐留していた米軍を撤退させる方針を明らかにした。背景にはロシアの影が忍び寄り、撤退による影響が懸念されている。

ニジェールはイスラム過激派の温床となっており、フランスやアメリカが協力して対策を進めてきた。しかし、反欧米の軍事政権が台頭し、欧米軍の撤退が相次いだ。

ロシアはニジェールで存在感を高め、米軍の撤退を受けて訓練や装備提供を行っている。両国軍が同じ基地に駐留する状況に危機感が広がっている。

米軍撤退後のニジェールに急接近 ロシアの思惑とは?

アメリカ国防総省は西アフリカのニジェールに駐留する米軍を撤退させると発表した。撤退について「両国の関係の継続に影響を及ぼさない」と説明したが、背後にはロシアの影が忍び寄る。撤退の作業が進む中、国防総省関係者は、米ロ両軍が、現在、同じ基地に駐留していると明かした。米軍の撤退を待たずして、ロシアが急接近する理由。そして米軍撤退の影響をひもとく。(NNNワシントン支局 嶋太朗)

ニジェールは西アフリカに位置し、国土の約3分2をサハラ砂漠が占める。ニジェールが含まれる地域は、サヘル地域と呼ばれ武器や薬物の不法取引が頻繁に行われ、テロ組織の温床になっている。

イスラム過激派のテロ対策のため2013年からニジェールに駐留を始めた米軍は、約1100人の兵士を駐留させていた。主に2つの基地を使用して、ニジェール軍の育成のほか無人機などを使用してイスラム過激派の監視や攻撃を行っている。

ニジェールは旧宗主国のフランスやアメリカと協力してイスラム過激派対策を進めてきたが、去年7月にクーデターが勃発。欧米諸国と協力的な姿勢を示していたバズム大統領が失脚し、反欧米を掲げる軍事政権が発足した。

その結果、10年近く駐留していたフランス軍は撤退を余儀なくされ、米軍の撤退を求める抗議活動も頻発するようになった。こうした中、アメリカは、19日ニジェールに駐留する米軍を9月15日までに撤退させると発表した。

国防総省は撤退の理由を明かしていないが、国際安全保障が専門のウェイクフォレスト大のウォルドーフ教授は、反米を掲げる軍政の意向が強く働いたと指摘。

「ニジェールが米軍の撤退を求めたという事実に尽きる」と説明する。反米感情が高まっているニジェールの現状をふまえ「駐留を続けるのはとても危険で、撤退以外の選択肢は無かった」と分析した。

一方、アメリカと入れ替わるようにニジェールでの存在感を高めているのが、ロシアだ。BBCなどによると、ロシア軍は、先月中旬、ニジェール軍を訓練するための教官らを派遣した。最新鋭の防空システムを設置し、ニジェール兵に使い方を指導するという。

そして、現在、ロシア軍が撤退に向けた作業を行う米軍と同じ基地に駐留する事態となっている。

この状況についてオースティン国防長官は、「(ロシア軍は)米兵や米軍の装備に近づくことはできない」「状況を注視しているが、現状では重大な問題はない」と説明した。

しかし、ウォルドーフ教授は「敵対する2つの国の軍隊をこれほど近くに置くと、何らかの武力衝突、特に手違いによる衝突の危険性が高まる」と指摘する。