対中包囲網打破へ〝一枚岩〟となった日米韓の離間を狙う中国

AI要約

日本と韓国との首脳会談に臨んだ中国が、日米韓の連携に警戒を強めており、将来的に対中包囲網の打破を狙っている。

米国の対中圧力を受け、日本は中国を念頭に置いた半導体輸出規制を強化し、韓国も外交姿勢を転換している。

中国は日本や韓国が米国に過度に依存することを懸念し、日韓の完全な米国への依存を潰そうとしている。

【ソウル=三塚聖平】日本と韓国との首脳会談に臨んだ中国が意識するのは、同盟国などとともに対中圧力を増している米国の存在だ。日韓両国が米国と一枚岩となっていることに中国は警戒を強めており、日米韓を少しでも引き離し、将来的に対中包囲網の打破につなげることを狙っている。

中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は23日の記者会見で、日中韓の首脳会談について「現在、国際・地域情勢が複雑に変化している中、3カ国の協力に新たなエネルギーを注入することを期待する」と表明した。

中国が「変化」を意識せざるを得ないのが日米韓の連携だ。バイデン米政権はハイテク分野を中心とした対中輸出規制など対中圧力を同盟国などと増しており、日本は中国を念頭に置いた半導体輸出規制を強化した。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、米国と中国から一方の陣営に偏りすぎたとみられないよう歴代政権が保ってきた「戦略的曖昧さ」から脱却する外交姿勢を鮮明にしている。中国にとっては安全保障上の課題となっている。

中国メディア「財新」は5月中旬の記事で、「米国の東アジア2大同盟国である日韓が近年、米国に対する戦略的な依存を増大させている」と指摘。日中韓の首脳交流について「東アジア地域が再び冷戦式の陣営対立に陥ることを避け、地域の安全保障環境を改善することに役立つ」という見方を示した。

北京のシンクタンク研究員は「米国と完全にくっついた日韓を1ミリでも米国から引き離せれば、中国にとって今回の外交は成功だ」と見る。

中国は、日本だけでなく韓国が台湾問題への関与を深めようとしていることを強く警戒している。ただ、そうした課題は積み残しながらも、米国との対立長期化をにらんで日韓と対話を続ける構えだ。

一方で、中国は日米韓の政治状況も意識している。日本も韓国も政権与党には逆風が吹いており、米国では11月の大統領選でトランプ前大統領が返り咲く可能性が高まっている。日米韓各国の政治情勢が大きく変化し、今は盤石な〝一枚岩〟にひびが入ることも想定して布石を打っているとみられる。