中国の軍事演習、区域を22年より拡大 ミサイル発射控え日米刺激を回避か

AI要約

台湾の頼清徳総統が「一つの中国」原則を認めない立場を示し、中国が大規模軍事演習を行った。中国は台湾への圧力を増しており、今後も圧力をかけ続ける見通し。

演習は台湾周辺の離島も含む広範囲に行われ、中国は圧力を示す戦術を進めている。海警局との連携も強まり、さらなる圧力をかけることが予想される。

中国は弾道ミサイル発射を控え、国際世論を避ける姿勢を見せている。ただし、台湾との対話を拒んでおり、多方面から圧力をかけ続ける方針。

中国の軍事演習、区域を22年より拡大 ミサイル発射控え日米刺激を回避か

中国は、台湾の頼清徳総統が就任演説で「一つの中国」原則を認めない立場を示したことに反発し、今回の大規模軍事演習に動いた。過去の演習より区域を広げて台湾への圧力を増した一方、弾道ミサイル発射を控えるなど日米など国際世論を過度に刺激することは避けたもようだ。ただ、頼政権の動きに応じてさらなる圧力をかけ続けることが見込まれる。

中国国防省の呉謙報道官は24日、「台湾地区の指導者は就任以来『一つの中国』原則に挑戦し、『二国論』をあからさまに吹聴した」と述べ、頼氏を非難した。

頼氏は20日の就任演説で対中関係を巡り「現状を維持する」と表明しつつ、台湾が公称する「中華民国」と中華人民共和国は「互いに隷属しない」と述べた。中国政府は中台を別の国家とする「二国論」を展開したと反発。軍事演習を「『独立』の挑発に対する懲戒」と位置づける。

今回の演習は2日間の予定で始まった。2022年8月にペロシ米下院議長(当時)の訪台に対抗した際の計7日間より短いが、今回は台湾が実効支配する中国大陸近くの離島である金門島や馬祖島の周辺も演習区域に加えた。2月に金門島付近の海域で起きた中国漁船の転覆事故を機に中国当局がパトロールを常態化させたように、少しずつ状況を有利にする「サラミ戦術」を進める思惑がうかがわれる。

台湾本島を包囲することで有事の際に頼政権を孤立させる力を持つと誇示した。中国メディアは、とりわけ台湾本島の東方を封鎖することで、エネルギー輸入の「生命線」や、米国などによる支援を断つという効果を強調している。

中国で海上警備を担う中国海警局との連携も強めた。海警局は24日に艦隊が台湾東方の海域で、23日には台湾が実効支配する離島である烏坵(うきゅう)嶼、東引島の周辺海域で訓練を行った。

一方、22年8月の演習であった弾道ミサイル発射は確認されなかった。当時、弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)にも着弾し、地域の緊張が増して中国への非難が高まった。今回は国際的に不利な立場に置かれないよう演習の強度を入念に調整したとみられる。近く開かれる日中韓の首脳会談や、11月の米大統領選も意識した可能性もある。

ただ、中国政府は頼政権との対話を拒む姿勢を鮮明にしており、軍事や外交、経済など多方面の圧力を繰り出し続けるとみられる。(北京 三塚聖平)