ヒズボラの通信機器がまた爆発、レバノン各地で20人死亡 450人以上負傷

AI要約

レバノンでヒズボラの無線通信機器が相次いで爆発し、少なくとも20人が死亡、450人以上が負傷。18日と17日に爆発が起き、イスラエルとの緊張が高まっている。

ヒズボラとハマスはイランの支援を受けながら、イスラエルと交戦。イランによるテロ組織支援の影響が深まる中、ヒズボラは次なる行動を模索中。

18日の爆発では多くの人が死亡し、目を失うなどの深刻な被害が出ている。機器の爆発により地域全体が影響を受けている。

ヒズボラの通信機器がまた爆発、レバノン各地で20人死亡 450人以上負傷

デイヴィッド・グリッテン(BBCニュース)、ヒューゴ・バチェガ中東特派員(ベイルート)

レバノンで18日、同国を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーが使用する無線通信機器が相次いで爆発し、少なくとも20人が死亡、450人以上が負傷した。レバノンの保健省が発表した。ヒズボラが使用する機器の爆発は2日連続。

ヒズボラのトランシーバー(無線機)の爆発は、首都ベイルート南郊やベカー渓谷(高原)、レバノン南部など、ヒズボラの拠点とされる地域で起きた。

18日の爆発のいくつかは、前日の爆発による犠牲者の一部の葬儀が執り行われる中で起きた。

レバノン保健省は前日の爆発で12人が死亡したと発表。ヒズボラはイスラエルによる犯行だと非難していた。イスラエル側はコメントしていない。

こうした爆発に先立ち、イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は「戦争の新たな局面」に入ったと発表し、イスラエル軍の師団が同国北部に再配置されていた。

国連の アントニオ・グテーレス事務総長は「劇的なエスカレーションにつながる深刻なリスク」があると警告し、すべての当事者に「最大限の自制」を求めた。

「これらの機器を爆発させるのは、大規模な軍事作戦に先駆けた先制攻撃としてのことだと、その理屈は明らかだ」と、グテーレス氏は記者団に述べた。

■全面衝突に発展するのか

パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争に端を発した、イスラエルとレバノン国境を隔てた交戦は11カ月におよび、両者の全面衝突への懸念は既に高まっていた。

18日の爆発から数時間後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、攻撃で家を追われたイスラエル北部の住民数万人を「確実に故郷に」帰還させると誓った。

一方でガラント国防相は、イスラエルは「戦争の新たな局面を迎えている」とし、「資源と兵力の転換により、重心は北部に移りつつある」と述べた。

イスラエル軍は、最近ガザで活動していた陸軍師団がイスラエル北部に再配置されたことを認めた。

イランの支援を受けるヒズボラは、ハマスを支援するために行動しているとし、ガザでの戦闘が終わらない限りレバノン国境を隔てた攻撃はやめないとしている。ハマスはヒズボラと同様にイランの後ろ盾を受けている。

ヒズボラとハマスはいずれも、複数の国からテロ組織に指定されている。

ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師は19日に演説を行う予定で、同組織が次に何を計画しているのか示される可能性がある。

多くの死者を出した18日の爆発は、ヒズボラとって重ねて屈辱的な事態を招いた。同組織の通信網全体に、イスラエルが侵入している可能性もうかがえる。

多くのレバノン人はいまだに17日の爆発に衝撃を受け、怒っている状態だ。17日に数千もの小型通信機が、メッセージ受信後に同時に爆発した。端末を持つ人たちは、ヒズボラからのメッセージだと思っていた。

レバノンの保健相は17日の爆発について、8歳の少女と11歳の少年を含む12人が死亡し、2800人が負傷したとしている。

■18日に爆発した機器

BBC取材班は18日午後5時ごろ、ベイルート南郊ダヒヤで行われていた4人の葬儀にいたところ、大きな爆発音を聞いた。

参列者たちは混乱し、ほかの複数地域でも爆発があったとの情報が入り始めた。

ソーシャルメディアに浮上した未検証の動画には、ヒズボラの葬列とみられるものに大群衆が参加する様子が映っている。画面左で小さな爆発が起き、男性1人が地面に倒れ込むのがわかる。

レバノンの赤十字は、救急車30台以上がベイルート南郊やレバノン南部、ベカー渓谷での爆発に対応したと発表した。

レバノン保健省は、爆発は「トランシーバーを狙った」ものだったとした。ヒズボラに近い情報筋も、ヒズボラのメンバーが使用していたトランシーバーが爆破されたとAFP通信に語った。

レバノン国営通信社NNAは北部ベカー渓谷チャートで携帯機器を販売する店でトランシーバーが爆発し、男性1人が死亡したと報じた。

NNAによると、爆発したのはICOM-V82ハンドヘルドVHF無線機という、日本の電子機器メーカー「アイコム」の生産終了モデルという。

現場をとらえた動画では、テーブルや壁が焼損し、「ICOM」のラベルが付いたトランシーバーと思われる部品が破損しているのがわかる。

ソーシャルメディアに投稿された別の2カ所の爆発現場写真にも、同じモデルの機器が写っているようにみえる。

■大勢が目を損傷

ロイター通信はレバノンの治安当局筋の話として、トランシーバーは5カ月前にヒズボラが購入したもので、17日に爆発した小型通信機を購入したのも同じ頃だと報じた。

米ニュースサイト「アクシオス」は、ヒズボラに戦時下の緊急通信システムの一部として届けられる前に、イスラエルの情報機関が数千台のトランシーバーに爆発物を仕掛けたと、2人の情報筋の話として伝えた。

BBCがアイコムのイギリス支社にコメントを求めたところ、報道機関からの問い合わせはすべて、日本のアイコムの広報を通してほしいとのことだった。BBCは日本のアイコムに連絡している。

アメリカとレバノンの情報筋が米紙ニューヨーク・タイムズとロイター通信に語ったところによると、イスラエルは17日に爆発した小型通信機の中に少量の爆発物を仕込んでいたという。

ベイルート市内の病院の眼科医は、患者の少なくとも6割が片目を失い、ほとんどの人が手も失ったと、BBCに語った。

「おそらく、私の医者人生で最悪の日だ。とてつもない死傷者の数で、損傷の種類もひどいことになっている」と、エリアス・ワラク医師は述べた。

「残念ながら私たちは、多くの人の目を救うことができなかった。そして残念なことに、損傷は目だけにとどまらない。顔の損傷に加えて、脳に損傷を受けた人もいる」

(英語記事 Second wave of Lebanon device explosions kills 20 and wounds 450)