【コラム】持続可能性不透明な中国の輸出増加傾向

AI要約

中国の輸出回復は急速に進み、経済活動全体を支える役割が大きかった。しかし、市場はその持続性を懸念している。

先制的な予約注文は関税施行前に米国・EUとの貿易で赤字や在庫の増加として現れるはずだが、実際には変化が見られない。

中国の輸出好調の要因は価格競争力であり、多くの部門で価格下落が輸出を後押ししている。しかし、輸出増加傾向が持続可能かは不透明である。

中国の輸出回復は昨年10-12月期に始まってからスピードを出した。域内の他の国より成果が良い。消費不振と不動産市場低迷を背景に輸出は経済活動全体を支える上で役割が大きかった。市場はこうした状況がいつまで続くか懸念する。

最近市場で著しいナラティブは中国の輸出好調で予約注文が重く作用すると説明する。そのうちのひとつは企業の先制的注文だ。企業は多様な理由で注文を繰り上げる。米国や欧州連合(EU)がさらに高い関税を課す場合に備えて戦略的に購入時期を繰り上げることができる。

もし潜在的な関税が政治的に敏感な戦略部門を特に狙うならば、コスト上昇に備えようとする先制的注文がこの部門に集中すると予想できる。

研究調査の結果、実際にはそうではない。中国の輸出は関税リスクがある新エネルギー車・部品、先端製造製品、バッテリーのような部門に限定されず広範囲な製品類型にわたり回復力を立証した。

また、理論的に先制的な予約注文は関税施行前に対中貿易で米国・EUの赤字増加と在庫増加として現れるだろう。

実状はやはり違った。最近の四半期で中国と米国・EU間の貿易収支はほとんど変化がなかった。米国とEUの在庫蓄積データもやはり企業が積極的に中国商品を備蓄していないということを示している。

最近の中国の輸出好調を説明するさらに説得力ある要因は価格競争力というのが当社の分析だ。競争が激しい市場だけでなく、ニッケル・鉄鋼・運送装備のように明確に供給過剰な分野でも多くの部門で相当な価格下落が輸出に肯定的に作用した。実際に中国税関によると製品カテゴリーの約70%で年初より価格下落と船積み量増加が伴って現れている。

最近の輸出物量強勢はインフレを考慮した産業利益の低下と同時に発生した。これは過去に輸出量と利益の間の強い相関関係から抜け出した珍しいケースだ。輸出業者が全般的に感じるマージン圧力は現在の輸出増加傾向が持続可能でないかもしれないもことを意味する。

中国の製造業者が低い利益率に長く耐えるのは難しいだろう。短期的に外部需要が予想より減少したり、一部で懸念される通り米国が景気低迷に進入するならば、さらにそうなるだろう。これは中国の輸出モメンタムのピークがすでに過ぎたという当社の見解を裏付ける。いまや政策決定者の課題は景気浮揚策を設計することだ。ただ、輸出関連製造業投資に及ぼしかねない否定的な影響を最小化しなければならない。

ルイーズ・ルー/エコノミスト(オックスフォード・エコノミクス)