外信コラム 「落書き芸術」バンクシーは犯罪者か 英で圧倒的支持、日本のネット世論は否定的反応も

AI要約

ロンドンで活動する芸術家、バンクシーが動物を題材にした9つの作品を9日連続で公表。一連の作品は、地域住民からの支持を集める一方、社会の許容度に違いがあることが示唆される。

バンクシーの手法は、ストリート・アートと呼ばれる建物の壁面にメッセージ性の強い落書きをゲリラ的に発表するもの。その活動は一部で芸術として評価されつつも、違法行為として批判されることもある。

日本と英国の社会では、マナーやルールを重んじる傾向がありながらも、芸術や異端な事象に対する市民の許容度には差異があり、バンクシーの作品をめぐる議論も異なる見解が見られる。

外信コラム 「落書き芸術」バンクシーは犯罪者か 英で圧倒的支持、日本のネット世論は否定的反応も

正体不明の芸術家、バンクシーが英ロンドン各地で動物を題材にした計9つの作品を9日連続で公表した。13日に公表した、ロンドンの動物園のシャッターにゴリラなどを描いた作品が一連の「動物シリーズ」の最終作になるという。

バンクシーの手法は、建物の壁面などにメッセージ性の強い落書きをゲリラ的に発表する、いわゆるストリート・アートだ。

英国でも建物などに無許可で落書きすれば軽犯罪法違反や器物損壊罪などに問われる恐れがある。それだけにバンクシーを巡っては「芸術か犯罪か」の論議が昔から交わされてきた。

ただ、英世論の大多数はバンクシー支持だ。調査会社ユーガブが5年前に公表した「最も好きな芸術家」ランキングで、バンクシーはモネやゴッホらを抑えて堂々の1位に輝いた。

作品が公表された現場で筆者が近隣住民に聞いた際も「地域の誇りだ」などの声が圧倒的に多かった。

一方、日本のソーシャルメディア上の反応では「単なる落書きの犯罪行為」といった否定的な書き込みが予想以上に目につく。

日英の社会はマナーやルールを重んじる点で共通する。なのにこうした反応の差が出るのは、どちらが正しいかは抜きに、異端な事象に対する市民らの許容度の違いを示しているともいえそうだ。(黒瀬悦成「ロンドンの甃」)