欧州もアジアも「もしトラ」シフトの連携強化:米の「孤立主義」回帰を恐れ

AI要約

欧州やアジアの同盟・パートナー諸国が連携を深め、トランプ復権時の対応策を進めている。

米国がグローバルな指導力を放棄して孤立主義的外交に逆戻りする恐れから、ウクライナ支援など安全保障枠組みを構築。

欧州諸国、日韓、オーストラリア、ニュージーランドによる連携強化、NATOの新司令部設立などの対策が取られている。

欧州もアジアも「もしトラ」シフトの連携強化:米の「孤立主義」回帰を恐れ

高畑 昭男

米大統領にトランプ前大統領が返り咲く事態に備えて、欧州やアジアで同盟・パートナー諸国が連携や協調を深める動きが進んでいる。「トランプ2.0政権」になれば、米国がグローバルな指導力を放棄して孤立主義的な外交に逆戻りする恐れがあるためだ。

7月上旬にワシントンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、「もしトラ」が隠れた主要議題となった。その対応として、第1にバイデン政権がひねり出したのは、ウクライナへの訓練や武器援助を含む長期的な安全保障支援の枠組みとなる「ウクライナ・コンパクト」の創設だ。この構想にNATOと欧州連合(EU)の主要国に日本を加えた26カ国が参加を決めた。ウクライナ支援に後ろ向きで知られるトランプ氏が復権しても継続して支援を行うことを目的としている。

トランプ氏が副大統領候補に指名したバンス米上院議員は「ウクライナ領の一部をロシアに与えて戦争を終結すべきだ」などと公言している。トランプ政権になれば、ウクライナは支援を打ち切られる上に、不本意な停戦条件まで押し付けられる恐れが強い。

このためコンパクトでは、ウクライナに対して(1)2030年代までを見通した多国間支援の継続、(2)EUによる軍事支援の提供、(3)参加国の防衛閣僚会合を通じた支援──などを申し合わせた。また、現在の戦闘が終結したとしても、ロシアの再侵略に備えてウクライナ軍の能力向上を続け、NATO、EUへの加盟支援も多国間で行っていく内容となっている。

第2に、駐独米軍基地内にNATO独自の新司令部(要員700人)を新設し、キーウにNATO高官を派遣することも決まった。ウクライナ軍の訓練や装備配布の実務作業はこれまで主として米国が担っていたが、これを徐々にNATOへ移管していく狙いがある(※1)。

連携を深めつつあるのは欧州諸国だけではない。首脳会議に「インド太平洋パートナー」(IP4)として参加した日韓、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国は、ウクライナのゼレンスキー大統領を交えた5カ国首脳会談を開き、「ウクライナ問題は欧州だけでなく、インド太平洋を含む世界の問題」(岸田文雄首相、7月11日)との認識を踏まえて、継続して協力していくことを確認した。IP4首脳はバイデン大統領とも会談し、ロシアと北朝鮮の軍事協力を「重大な懸念」として、さらに連携を進めることで一致した。