バングラ情勢、米印や日本が安定化注視 衣料品輸出拠点 強権首相逃亡でユヌス氏トップに

AI要約

バングラデシュで暫定政権が発足し、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が政権トップに就任した。暫定政権は総選挙実施まで政府を運営し、不正行為に関与した者は裁かれると強調されている。

米国は新政権を歓迎し、過去の選挙の適正性に疑問を呈していた。バングラデシュとの関係に冷淡な姿勢を示し、ハシナ政権の強権性に批判的だった。

隣国インドは緊張感を持ち、ハシナ氏の保護や関係者との連携を強化している。モディ政権はバングラデシュの内政に影響を与える可能性がある。

バングラデシュで8日、暫定政権が発足し、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏(84)が政権トップに就任した。同国は世界第2の衣料品輸出国で、多数の工場を持つだけに、米国や隣国インドなどは情勢がどう安定するかに神経をとがらせている。

暫定政権は、総選挙実施で正式政権が発足するまで政府を運営する。ユヌス氏は「無政府状態は敵であり、すぐに打倒されなければならない」と述べ、「不正行為に関与した者は裁きを受ける」と強調した。

■ハシナ政権に冷淡だった米は歓迎

米国務省のミラー報道官は8日、暫定政権について「バングラデシュ国民の民主的な未来を描くことを望む」と歓迎した。ミラー氏は5日、「暴力行為、法律違反行為の責任者は当然説明責任があるはずだ」と、ハシナ政権による取り締まりで多数の市民が死亡したことを暗に批判している。

米国はそもそも、ハシナ氏の強権性に批判的だった。今年1月のバングラデシュ総選挙は、野党のバングラデシュ民族主義党(BNP)が「弾圧」に反発してボイコットし、ハシナ氏与党のアワミ連盟(AL)が勝利したが、米国務省は「選挙は自由で公正ではなかった」と断じ、反政権派数千人が逮捕されたことに懸念を表明した。

バイデン政権は昨年の民主主義サミットでは、120もの国と地域に声をかけながらバングラデシュを招かず、民主主義の仲間に入れていない。ハシナ政権崩壊にも冷淡だとみられる。

■イスラム過激組織を警戒するインド

隣国の地域大国インドは敏感になっている。モディ政権は5日、空路で国外に脱出したハシナ氏をニューデリー近郊の空軍基地で受け入れ、保護した。

ヒンズー至上主義のモデ首相はハシナ氏と緊密な関係にある。元々、BNPがイスラム原理主義政党と連携し、インドの敵国パキスタンに比較的友好的だったことへの不満があったことに加え、世俗的なアワミ連盟はバングラデシュがパキスタンから独立したときのインドの介入に恩義を感じているという背景がある。

モディ氏は、1月の総選挙も「成功」とたたえた。昨年、20カ国・地域(G20)の議長としてニューデリーで首脳会議を開いた際も、ハシナ氏を南アジアの国から唯一、招待して厚遇し、米国とは対照的な対応を見せた。