【時論】WHOの国際保健規則破った北朝鮮の「汚物風船」

AI要約

韓国合同参謀本部によると、北朝鮮は5月28日から最近まで7回にわたり、合計2400個以上の汚物風船を飛ばし、国際社会で非難を受けている。

北朝鮮の汚物風船には人糞や他の生活廃棄物が含まれており、米国務省はこの行為を非難している。韓国政府も反応し、南北の緊張が高まっている。

汚物風船は健康リスクをはらんでおり、感染症拡散や環境汚染の可能性が懸念されている。そのため、韓国政府は迅速な対応をしているが、国際社会の協力も必要である。

【時論】WHOの国際保健規則破った北朝鮮の「汚物風船」

韓国合同参謀本部によると、北朝鮮は韓国を標的とみなして5月28日から最近まで7回にわたり累積2400個以上の汚物風船を飛ばしてきた。類例を見つけるのが難しい低級な挑発のため国際社会で北朝鮮は「汚物政権」という批判を受けている。

米国務省は北朝鮮の汚物風船挑発に対し「おぞましく無責任で幼稚な行為」と批判した。北朝鮮が送った汚物風船には人糞と推定される物質だけでなく、たばこの吸い殻、廃紙、布切れ、ビニールなど多様な生活廃棄物が入っている。

北朝鮮の汚物風船に対応して韓国政府は9・19軍事合意全体の効力停止と対北朝鮮拡声器再開などで反応した。北朝鮮の汚物風船散布により南北の緊張が高まっている。汚物風船問題は政治的・軍事的問題だけでなく、韓国国民の健康を脅かす重大な挑発だ。筆者はコロナ禍で世界が苦しんだ状況で北朝鮮が人類の感染症拡散防止努力を阻害するやり方に特に注目している。

北朝鮮の汚物風船は感染症拡散と環境汚染など多様な健康リスクを招きかねない。1990年代の「苦難の行軍」以降、北朝鮮は健康管理インフラ不足、栄養不足、きれいな水と衛生施設へのアクセス困難など、脆弱な公衆保健衛生状況に置かれている。韓国疾病管理本部の発表によると、北朝鮮住民の30%以上が感染症にかかったものとみられる。こうした状況で北朝鮮が意図的であろうがなかろうが汚物風船は空気・水・土壌を汚染させる細菌・ウイルス・寄生虫を運んでまき散らすことができる。韓国国民が感染源にさらされる危険が増加しかねない。

ここには風邪とインフルエンザのような一般的な感染性疾病だけでなく、コレラや肝炎のような深刻な疾病も含まれる。汚物風船にはアレルギー反応や呼吸器異常を起こす恐れのある有害物質が入っている可能性がある。こうした場合、子どもや高齢者など健康脆弱者がさらに危険になるかもしれない。極端に言えば北朝鮮が汚物風船を生化学武器散布手段として利用する可能性に対する不安と恐怖は国民の精神健康にも否定的影響を与える恐れがある。

汚染風船散布は北朝鮮が1973年5月に加盟国となった世界保健機関(WHO)の規定違反という批判の余地もある。WHO憲章には「到達できる最高水準の健康を享有するということは人種・宗教、政治的信念と経済的または社会的条件の区別なく万人が持つ基本的権利のひとつ」と明示している。WHOは2005年に感染症拡散を予防して統制し公衆保健問題で国同士の協力を促進することを目標とする国際保健規則(IHR)を導入した。国境を超えて潜在的に感染の危険性がある人体由来物、すなわち人糞が入っている汚物風船を送る北朝鮮の挑発は国際的な保健の約束に深刻に違反したものだ。隣接国の健康と安全に脅威になりかねず国際社会が鋭意注視しなければならない問題だ。

韓国政府は国民の健康と安全を守り、国際的にも責任ある行動を見せるため、北朝鮮の汚物風船挑発に即座に適切な措置をしてきた。これに加えて韓国政府はWHOなど国際社会と協力する必要がある。状況を緊密に監視し、汚物風船の起源を追跡して潜在的公衆保健への脅威に備えなければならない。

公衆保健への脅威を政治的・軍事的挑発手段として利用するのはいかなる場合にも容認することはできない。北朝鮮は汚物風船挑発が明白な世界公衆保健への威嚇であることに気付いて、国際保健規則を順守するなどWHO加盟国として責任ある行動をしなければならない。

北朝鮮の汚物風船は劣悪な北朝鮮当局の保健意識と水準をそのまま示している。北朝鮮が汚物風船挑発を行う間にも北朝鮮住民は依然として結核、肝炎、マラリア、慢性呼吸器疾患、がんなどの感染性疾病や非感染性疾病で苦痛を受けている。

生命権と健康権の保障は国際社会が規定した人権保障に向けた最も基本段階の措置だ。北朝鮮国内の公衆保健改善は脆弱な住民の人権増進にも寄与できる。韓国と国際社会はいつでも北朝鮮の公衆保健問題解決を助ける準備ができている。北朝鮮は反感だけ呼び

起こす不必要な挑発を中断し、住民の生命権と直結した本質的問題から取りまとめることを促す。

イ・ジョンジェ/香港大学看護学部助教授