「バスキア担保融資」って? アートは売って儲けるのではなく活用すべし「アート融資」の魅力とは?

AI要約

アート・ローンという美術品を担保にした融資市場が急成長している。

富裕層の需要を受けて、アート作品を資産運用に活用する動きが活発化している。

若いコレクターの参入やアート・ローン市場の成長が続く一方、将来的なリスクや変動性も考慮しなければならない。

「バスキア担保融資」って? アートは売って儲けるのではなく活用すべし「アート融資」の魅力とは?

近年、アートと金融の世界がますます融合している。

「アートは所有する楽しさがあっても、経済的には収益性の低い資産」だと言われてきた。

株式投資などであればいつでも売買できるが、アート作品は売りたいときに買い手が見つからなければすぐには売却できない、つまり「流動性が低い」投資だった。

しかし、過去5年ほどで状況は大きく変わってきている。

所有するアートコレクションを活用して、資産運用をする動きが活発化しており、「アート・ローン」こと美術品を担保とした融資(ローン)の市場が急成長している。

このサービスは、いわば「資産としてのアートの流動性」を高めるもので、最近まではプライベートバンクの最も裕福な顧客のみが利用できた。彼らがまとまった現金が必要な際に、所有する株式や不動産を売却する以外の方法としてニーズがあった。

株式や不動産は流動性は高いが売却には税金がかかる。一方、アート・ローンは所有している美術品を担保にすることで融資を受けられる。アート誌「ザ・アート・ニュースペーパー」によれば、「作品の評価額のおおよそ50%を融資として受けとれる」という。

コンサルタント会社「デロイト」の報告によると、富裕層顧客の84%がアートで多額の富を有しているという。

その需要の高まりとともに、過去5年間で、プライベートバンクに負けじとサザビーズのようなオークションハウスの金融部門も積極的に関与するようになっている。

サザビーズ・ファイナンシャル・サービスでは、過去2年間でアート・ローンのポートフォリオが100%以上増加した。

同社は高額の購入者に対し、オークションで200万ドル(約3億1780万円)を超える商品を購入した場合、ハンマープライスの50%を即時融資するサービスを提供するなどして、この金融ビジネスを強化している。

プライベートバンクは、現代アートに重点を置く傾向があるが、サザビーズは自社が販売するほぼすべての種類の物品に対し融資をおこなっている。バスキアやウォーホル作品はもちろん、レンブラントやフェルメールなど古典絵画からワイン、腕時計と幅広い。

また、同社は2024年4月には、バスキアやマーク・ロスコの作品を含む2000点以上の芸術作品に対する融資を裏付けた7億ドルの資産担保証券を発行した。

英誌「エコノミスト」によれば、融資需要の背景には、「逆説的ではあるが、アート市場の低迷」がある。

2023年は最も人気のあるアート作品の価格が約40%下落し、その結果「多くのコレクターは自分の所有するアートを売るのではなく、活用することに決めた」と、専門家は同誌に語っている。

特に若いコレクターが熱心で、35歳以下のコレクターの83%が、アートを購入する理由は経済的理由であると述べている。

このアート・ローンの需要の高まりと同時に、市場に参入する若者がさらに増えているという。

「デロイト」の試算によると、アート・ローン市場は2021~2022年に240億ドル(約3兆8000億円)から313億ドル(約5兆円)に成長した。さらに、2023年末までに最大340億ドル規模になる可能性が予測された成長市場だ。

しかし、ブームは続くのか?

同誌は「金利が低下し、融資基準が緩和されると、アートを裏付けとしたローンの需要が減少する可能性がある」と指摘している。

美術品の価格も変動しやすいため、貸し手は著名なアーティストの作品しか受け付けないという制限も生じている。

とはいえ、現金を必要としていて、自宅にバスキア作品があるという富裕層にとっては、資金にすぐにアクセスする新しい方法が開かれたのは間違いないようだ。