フランス保守本流、瓦解の危機 極右パワーに押され マクロン与党大敗の好機生かせず

AI要約

フランス政治で保守本流の共和党が極右国民連合の躍進に押され瓦解の危機に直面。下院選で右派結集を訴えるも党内反発あり。

左翼陣営は結集し、国民連合を追い上げる一方、共和党はマクロン氏の中道新党に支持基盤切り崩される。

フランス下院選は激戦が予想され、極右勢力の国民連合が注目を集める。

戦後フランス政治で保守本流を担った「共和党」が、極右「国民連合」の躍進に押され、瓦解の危機に直面している。30日に投票が迫る国民議会(下院)選で、シオティ党首が「右派結集」を訴えて国民連合と選挙協力する方針を示したところ、党内で反発が沸騰。党内中道派の一部はマクロン大統領与党との連携に動き、混乱に歯止めがかからない。

下院選は9日、マクロン氏が欧州議会選での大敗を受け、「国民に信を問う」と突然実施を発表した。欧州議会選で国民連合は31%の得票率で首位に立った。与党は15%、共和党は過去最低の7%に沈んだ。

■「右派結集」の連携 党内反発

シオティ氏は、移民政策で国民連合に近い共和党右派。11日にテレビで「マクロン政権は弱体化した。いまこそ右派結集で有権者に選択肢を示すべき」と訴え、国民連合との協力方針を表明した。「裏切り行為」と反発した党幹部は翌日、会合を開いて党首解任を決めた。これに対し、シオティ氏は法廷で「解任は党規違反。無効」の判決を勝ち取った。

党が分裂する中で下院選は17日、公式選挙期間に入った。シオティ氏の合意を受け、下院(定数577)の62選挙区で国民連合、共和党の2党公認候補が擁立された。一方、国民連合の支持率が低い首都パリ近郊では「極右打倒」を掲げて与党から推薦を受ける候補も相次ぐ。シオティ氏の地盤など一部の選挙区では、共和党出身候補2人が競合する。

■左派は結集 支持率で追い上げ

右派の混乱をよそに、左翼陣営は、統一候補の擁立で選挙協力を結んだ。世論調査の支持率で、国民連合を追い上げている。

共和党は、現共和制を作ったドゴール大統領与党が源流。保革2大政党制の時代は右派を広く糾合し、シラク、サルコジら歴代大統領を輩出した。2017年、マクロン氏が中道新党を率いて大統領選に勝利すると、支持基盤を切り崩された。国民連合の台頭で、中道、極右の双方から「挟撃」される形となった。

国民連合は1972年、反ドゴール派の極右勢力が結党した。大戦中にナチス・ドイツに協力したビシー政権の残党も多かった。党創設者は反ユダヤ主義発言を繰り返したため、「極右の異端政党」と忌避されたが、いまは移民規制を掲げて全国に支持を広げている。

フランス下院選は小選挙区2回投票制。30日の第1回投票で過半数を得票した候補がいない場合、上位2候補が、7月7日の決戦投票に進む。(三井美奈)