アジア金需要が依然堅調、地政学リスクと景気不透明感で
アジアで金現物需要が堅調なままで、価格は過去最高値に近い水準で推移している。ヘッジ需要が強い要因とされており、投資先としての金の魅力が高まっている状況だ。
中国人投資家やアジア各国で金への関心が高まっており、金への投資が増加傾向にある。一方、インドでは高値に対する敏感度が高く、需要は低迷している。
金市場の動向や地政学的リスク、投資家の行動など、金価格に影響を与える要因について述べられている。
Ashitha Shivaprasad Brijesh Patel
[シンガポール 12日 ロイター] - アジアで金現物需要が堅調なままだ。価格は5月に記録した過去最高値の近辺で推移している。足元価格は1オンス=2300ドル余り。年初来値上がり率は約12%に及び、前月に記録した最高値からの値下がり率はわずか6%にとどまっている。
関連業界幹部らは、地政学的リスクと景気の先行き不透明感を受けた旺盛なヘッジ需要を要因に挙げる。
アナリストらの間では、不動産や株式などが投資先の選択肢として期待感が乏しいことが指摘される。
ロンドン地金市場協会(LBMA)のルース・クロウェル最高経営責任者(CEO)は「マクロ経済環境が正常化し、不動産や株式投資の魅力が増せば、金価格の価格感応度は戻ってくると思う」と話す。
日本貴金属マーケット協会(JBMA)の池水雄一(ブルース・イケミズ)代表理事によると、国内価格は過去最高値を記録しつつも、強気派が弱気派よりも優勢だという。
専門家らは、中国人投資家も金に価値を見いだしていると話す。今年第1・四半期の金貨と金地金の購入は27%急増した。背景には人民元相場の下落や不動産市場の長期低迷、貿易摩擦があるという。
シンガポール貴金属市場協会(SBMA)のアルバート・チェンCEOは「買いたい人は価格に関係なく買うという傾向」を指摘する。
タイでは、値上がりのニュースが流れると、すぐに金取り扱い店の外に行列ができる、とMTSゴールド・グループのナッタポン・ヒルニャシリCEOは語る。
ベトナムでは国内価格が国際市況にプレミアムが乗って高いままだが、投資家は買いだめに殺到している。
一方、インドでは高価格に敏感な状況が続いている。世界第2位の金地金消費国だが需要は低迷し、5週連続で国際市況よりも安く取引されている。一般消費者は記録的な高値水準を受けて、新しい金の宝飾品を購入するのではなく、古いものを新品と交換する傾向があるためで、2024年の金輸入は約20%減少すると予想されている。