2024年夏の「世界のオーバーツーリズム対策」 観光地の「目に見えない負担」を減らすには

AI要約

世界各地の観光地がオーバーツーリズムに悩み、さまざまな対策が取られている。

観光地での観光税や宿泊税の導入など、観光客に負担をかける取り組みが増えている。

観光地の持続可能な発展のためには、観光客と地元住民のバランスを重視した政策が必要だ。

2024年夏の「世界のオーバーツーリズム対策」 観光地の「目に見えない負担」を減らすには

コンビニエンスストア越しの富士山が撮れるとして、外国人観光客に人気の山梨県富士河口湖町。観光客による迷惑行為が後を絶たないため、同町がとった「黒い幕を設置する」という対策は、日本のみならず海外でも話題となった。

新型コロナによるパンデミックが収まって以降、世界の多くの観光地がオーバーツーリズムに悩まされている。夏の旅行シーズンを迎える前に、具体的な対策に乗り出すところも少なくない。酔っ払った観光客に悩まされてきたスペインのイビサ島とマヨルカ島の一部地域では、深夜のアルコール販売と路上での飲酒が禁止された。

だが、最も多いのは「お金」に訴えるやり方だ。

インドネシア・バリ島は2024年2月から、同地の文化と環境を守るためとして、外国人観光客から一人当たり15万ルピア(約1400円)の観光税を徴収している。2023年に約33万人の観光客が訪れたガラパゴス諸島は、8月から入島料を従来の100ドルから200ドルへと大幅に値上げする。

ベネチアでも2024年4月末から7月半ばまで、「観光客と地元住民のバランスをとるため」、土日の日帰り観光客に対し、5ユーロ(約850円)の「入場料」を課すようになった。

宿泊税を引き上げるところもある。2024年1月、アムステルダムはオーバーツーリズム対策として、宿泊税を7%から12.5%に変更した。今夏に五輪開催を控えるパリも、ホテル業界や市民からの反発を受けながらも、宿泊税を3倍にして公共交通機関の整備に充てるとしている。

こうした観光税や宿泊税は、旅行者にとっては痛い出費だ。

しかし、米コーネル大学の「持続可能な観光資源マネジメントプログラム」の責任者であるミーガン・エプラー・ウッドは、観光客によってもたらされる二酸化炭素や日常生活における困難、また地域のインフラや公共施設への負担を、観光による「目に見えない負担」と呼び、対処するタイミングは早ければ早いほど良いと、米紙「ニューヨーク・タイムズ」に語る。

「観光地にあまりにも大きな負担をかけると、そこに住む人々は不幸になり、観光客に対してあまり良い顔をしなくなります。時間が経てば経つほど、それを元に戻すコストは高くつくことになるのです」

観光地がこのような課題を抱えていることを受け、英紙「デイリー・テレグラフ」のコラムニスト、ジェーン・シリングは、旅行以外の健全な娯楽にも目を向けるよう提案している。

現代社会はさまざまな娯楽に溢れている。これを機に、いつもと違う休暇の過ごし方に挑戦してみるのもいいかもしれない。