配達員の過重労働をさらに重くする過大要求 「午後9時半に届けろ」「一滴の雨粒跡で受け取り拒否」も

AI要約

2015年に採択された国連の持続可能な開発目標、「SDGs」に向け、2030年に向けた取り組みの重要性が増している。

SDGsの達成には、消費者一人ひとりが意識を変えて行動することが必要であり、物流問題など日常生活に忍び込んでいる課題にも目を向ける必要がある。

例えば、宅配ロッカーの混雑が再配達などの負担を生み、トラックのCO2排出増加や配達員の長時間労働を引き起こすなど、SDGsを阻害する要因となっている。

配達員の過重労働をさらに重くする過大要求 「午後9時半に届けろ」「一滴の雨粒跡で受け取り拒否」も

 2015年に採択された国連の持続可能な開発目標、「SDGs」。達成期限の2030年に向け、折り返しでもある今年は、物流などの「2024年問題」にも直面している。働き手も少なくなる中、持続可能な社会のために消費者一人ひとりができることは何か。AERA 2024年6月10日号より。

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 ゴールデンウィーク中、男性(55)が都内のマンションに帰宅すると、宅配便の「不在連絡票」が投函(とうかん)されていた。投函時刻は30分ほど前。であればと、すぐに配達員のドライバーに電話を入れた。

「このあと、うかがいます」

 配達員の快活な声に申し訳なさが募る。ただ、どこかで自分には非がない、と思いたかったのかもしれない。それでつい、再配達の商品を受け取る際、気になっていたことを告げた。

「これって、マンションの宅配ロッカーに入れてもらえない商品なんですか」

 配達員は一瞬表情をこわばらせ、こう返した。

「宅配ロッカーは満杯です。連休中はこうなることが多くて」

 男性は返す言葉がなかったという。正直、宅配ロッカーの混み具合など気にしたこともなかった。だが今、「知らなかった」では済まない事態が進んでいる。

■12時間超えの勤務時間

 国連のSDGsは今年、折り返しを迎えた。SDGsを考えるとき、実は私たちが普段何気なく続けている習慣や行動が、その達成を阻んでいることに気づかされる。

 例えば、冒頭の男性。宅配ロッカーの満杯に意識が及ばなかったことが再配達につながり、その結果、トラックのCO2排出増加や、配達員の長時間労働を招いた。いずれもSDGsが目標としている「気候変動対策」や「健康的な生活」「働きがい」といったキーワードを遠ざけることにつながっている。

 まずは足もとの生活から。そして、私たち自身の意識を変えないとSDGsの達成には到底たどり着けない。その如実な例が物流問題だ。中でも今年4月から始まった物流の「2024年問題」はトラックドライバーの時間外労働(残業)の上限規制にとどまらない課題を包含している。