崖っぷちのウクライナ軍が最後の"賭け戦"を開始!? ロシアへの攻撃が新たなフェーズに!

AI要約

ウクライナ北部への露軍侵攻再開、新たな形態の戦争が始まった。

露軍の攻撃策略とウ軍の防衛対応が描かれている。

米国支援によりウ軍の武器技術が向上、対露軍攻撃手段も進化。

崖っぷちのウクライナ軍が最後の

5月10日、ロシア軍(以下、露軍)が国境を越えて、ウクライナ・ハルキウ北部への侵攻を再開した。これは露軍がウクライナ東部、南部戦線にあるウクライナ軍(以下、ウ軍)の戦力を、ハルキウ北部に割かせる戦略だと報道されている。しかし、このことが示すのは、これまでとは違う側面を持つ新しい形態の戦争が始まったということなのだ。

露軍に奪われたウクライナ南部、東部、クリミア半島は、元々ウクライナ領土なので、西側から供与された各種兵器は使い放題。しかし、ロシア本土では絶対に使用してはならない取り決めだ。

一方、露軍には第二次世界大戦で、対ナチスドイツ軍戦に勝利をもたらしたT34戦車がある。さらに露軍は「空飛ぶ滑空T34戦車」と呼ばれるUMPK-1500滑空誘導爆弾(射程70km)を、Su34戦闘爆撃機に2発搭載。ハルキウ攻撃はこの重さ1.5トンの爆撃から始まった。その爆撃量は一ヵ月に3000発にも及ぶ。

元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう言う。

「露軍はハルキウ北部に4万人規模の兵力を集結して攻撃、占領地を拡大しています。さらに予備兵力を確保しています」

そのハルキウ攻撃で露軍が投入したのは「亀戦車」。戦車の前方に地雷源処理車用の除去ローラーを、そして後方や上部には無人ドローン攻撃を防ぐための装甲を取り付け、さながら"亀の甲羅"で防御力を高めた改造戦車だ。

そして、亀戦車で地雷原を突破したところに露軍が攻め込む。通常の機甲部隊ならば、亀戦車の後には装甲車両BTRが続くが、受刑者らで編成されたストームZ部隊は違う。民間車両のバン、オフロードバイク、中国製電動ゴルフカートで突っ込んでくる。

「機甲部隊として、戦車に歩兵戦闘車、装甲歩兵輸送車を随伴させ移動、散開して戦闘する部隊を育成するには長期間の訓練が必要です。しかし露軍はいま、新兵に十分な訓練を行わず基礎訓練だけ受けさせて攻撃をさせています。

大量の人員損耗をおかしてまで遂行している露軍の狙いはハルキウを攻撃することで、ウ軍の予備兵力を投入させて兵力不足にさせ露軍の主導性を更に発揮しようとしたものでした。その狙いは当たり、ウ軍はかなり兵力的に厳しい状態に陥ったのです」(二見氏)

突っ込ませたストームZに対してウ軍が砲火を浴びせれば、火砲のいる火点が分かる。そこに、露軍はSu25に載せたKAB滑空誘導爆弾を落とし、破壊するという流れだ。

しかし、ウ軍砲兵部隊が露軍歩兵部隊に与えた損害は少なかった。なぜならストームZに浴びせるはずの155mm砲弾が枯渇し、砲撃が極端に少なかったからだ。

「ウ軍はこの露軍の攻撃に対応するための155mm砲弾不足で厳しい戦いを強要されています。

しかし、米上院は4月23日にウクライナへの約610億ドル(約9兆4000億円)の支援予算案を可決。バイデン米大統領が翌日に署名して、再開されました。そして、1ヵ月以上が経過して、やっとその効果が表れました。最近、ウ軍は露軍の亀戦車を、対戦車兵器ジャベリンミサイルや、大型化させた爆薬を搭載した無人ドローンFPVで撃破できるようになったのです」(二見氏)

となれば、それに続く民間車両バン、バイク、中国製電動ゴルフカートは、120mm迫撃砲や、上空で散弾となる155mm砲弾で処理できるようになった。

「しかし、ウクライナ領土外に西側からの支援兵器で砲爆撃をしてはならないのでは戦争になりません。露軍はロシア領土に集結部隊、兵站部隊を配置すれば有効に対処できるからです。露軍はウクライナ領を自由に砲爆撃できて、ウ軍ができないのでは、戦闘は圧倒的に露軍が有利になります」(二見氏)

もし、北海道・小樽近くに露軍が上陸した時に、自衛隊が日本国領土、領海、領空以外に砲爆撃禁止とされたら、どうなるのだろうか。