誰も書かないから私が書いた~帝国主義アメリカの野望

AI要約

2024年5月14日付の「ワシントン・ポスト」の記事によると、中国のメディアやコメンテーターは今やアメリカを「美帝」と揶揄している。この表現は、「美国」から「美帝」へと変化し、アメリカが帝国主義的な国として批判を受けるようになっている。

帝国主義とは、他国に自由・民主主義を押し付けて利益を追求する方式としても存在する。アメリカはそのような帝国主義を展開しており、海外での影響力を利用して短期的なビジネスの利益を追求している。

具体的には、アメリカのコソボ支援は、コソボの発展よりもアメリカのビジネスの利益重視で行われていると指摘されており、複数のプロジェクトで疑念が持たれている事例もある。

誰も書かないから私が書いた~帝国主義アメリカの野望

 2024年5月14日付の「ワシントン・ポスト」の記事のなかに、「いまや中国のメディアやコメンテーターは、アメリカを 「美国」ではなく「美帝」と揶揄している」という、興味深い記述があった。「美国」の発音は、「メイグォ」(Meiguo)だが、「美帝」は「メイディー」(Meidi)と発音する。もはやアメリカは「美しい国」でも何でもなく、「アメリカ帝国主義」(美帝國主義)の国として批判の的となっているのだ、少なくとも中国では。

 帝国主義というと、征服や略奪といった暴力による他国への侵略による植民地支配のことだと思うかもしれない。だが、リベラルデモクラシー(自由・民主主義)を他国に奨励し、他国に介入するというやり方によって利益を収奪するという帝国主義もある。アメリカが得意とするやり口だ。思想家、柄谷行人が指摘するように、帝国主義とは、国家と資本が強く結びつきながら、その国家および同国に属する企業の影響力を海外に拡大して利益を追求する方式と定義することもできる。アメリカも中国も欧州連合(EU)も帝国主義と言えるし、日本もまた帝国主義的な面をもっている。

 そう考えると、アメリカ帝国主義の具体的な手口が気になるだろう。その実態を知れば、アメリカという国がいかなる国であるかがわかる。ここでは、2024年2月に「ポリティコ」で公表された記事や「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)の記事を参考にしながら、コソボでのアメリカの帝国主義的ふるまいを明らかにしてみよう。

 コソボはベルギーの3分の1ほどの小さな国で、人口は約180万人にすぎない。国内総生産(GDP)は約100億ドルで、アメリカ最小のバーモント州の4分の1以下だ。1999年にアメリカと北大西洋条約機構(NATO)の同盟国がセルビアから引き離したのがコソボであり、2008年2月17日、コソボ共和国として独立が宣言される。それを支援したのがビル・クリントン米大統領であった。だからこそ、首都プリシュティナには、彼の銅像がそびえている(下の写真)。

 (出所)https://www.nytimes.com/2012/12/12/world/europe/americans-who-helped-free-kosovo-return-as-entrepreneurs.html

 2008年以降も、アメリカはコソボ支援を継続した。しかし、「ポリティコ」は、「アメリカはコソボに多額の資金を投じたが、よくみると、ワシントンの優先順位は、コソボが発展するために本当に必要なものを提供することよりも、アメリカの短期的なビジネスの利益によって決定されたことがわかる」と厳しい指摘をしている。

 たとえば、建設会社ベクテルは高速道路建設を手掛けた。アメリカはまず、当時貧困率が約60%だったコソボが本当に道路を必要としていることを納得させなければならなかった。クリントン政権下で国家安全保障会議委員を務め、その後ロビイストに転身したマーク・タブラリデスは、当時のクリストファー・デル米大使の助けを借りて、ベクテルのためにプリシュティナの旧友に建設を働きかけた。世界銀行と国際通貨基金(IMF)の双方から、このプロジェクトの経済性に関して重大な懸念が示されたにもかかわらず、コソボ政府は推進を決定し、2010年にベクテル・エンカ(トルコ企業のエンカとの合弁)と約7億ユーロを見込んで契約を結んだ。結果として、ベクテル・エンカは、全長102 km、総工費4億ユーロの高速道路建設プロジェクトを77kmに縮小し、2012年に総工費約10億ユーロで完成させた。

 しかし、2024年1月、プロジェクトが承認されたときに在任していたパル・レカジ前インフラ大臣は、ベクテル・コンソーシアムに5300万ユーロを過大に支払ったとして、職権乱用の罪で有罪判決を受け、禁固3年の判決を言い渡された。この事件では、彼の同僚3人も有罪判決を受けた。ベクテルはあくどい商売を展開していたのだ。