<欧州消滅の危機は本当?>説得力に欠けるマクロン大統領に期待しなければならない理由

AI要約

マクロンは欧州の危機を警告し、自らの立場の弱さによって説得力に欠けると指摘されている。

彼は欧州統合を主張しつつも、行動が一貫しないことが問題とされている。

フランスの経済困難とマクロンの政治的苦境が欧州の将来に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

<欧州消滅の危機は本当?>説得力に欠けるマクロン大統領に期待しなければならない理由

 欧州に消滅の危機が迫っているとのマクロンの発言について、ワシントン・ポスト紙の欧州担当コラムニストのホックステーダーが、2024年5月8日付の同紙で、メッセージは正しいがマクロンが言うのでは説得力がないと批判的に論評している。

 マクロンは、欧州はロシアの侵略、米国の離反そして欧州経済の停滞と台頭するポピュリズムにより消滅の危機に直面していると警告した。欧州に関するマクロンの分析の重大さを否定することはできない。

 マクロンの問題は、演説の内容ではなく、メッセンジャーとしての資質にある。フランスの指導者とフランス自体ができることをやっていないのだ。7年を経過し、マクロンの国内外での信頼は低下している。

 欧州の苦難に対する彼の鋭い読みは現実に根ざしているが、その現実を自分の思う方向に変える彼の能力には疑問がある。一つは、マクロン自身が矛盾の塊である。

 マクロンは、防衛、金融、科学および気候変動対策において、欧州統合の強化を一貫して主張してきた。しかし、彼は、直近では、唐突に欧州のウクライナへの軍隊派遣を検討するよう呼びかけたように、ドイツとの関係を維持することに失敗している。

 彼は、自分の個人的な説得力によってプーチンにウクライナへの全面的な侵攻を中止させることができると考えていたが、ロシアを敗北させることでしかヨーロッパの安全保障を守ることはできないと主張するようになった。同時に、フランスは、ウクライナへの軍事援助としていくつかの重要なハードウェアは送っているが、全般的には遅れをとっている。

 マクロンのメッセージの力は、彼の政治的困難と連動している。マクロンの実績を支持しているのは国民の3分の1以下で、彼の中道連合は国民議会で過半数を失った。6月の欧州議会選挙を前に、彼の穏健派陣営は反移民ポピュリストに差をつけられている。

 フランス経済は、ユーロ圏ではドイツに次いで第2位だが、債務と財政赤字の増大のなか困難に直面している。フランスの会計検査院院長は最近、フランス国債の債務返済額は過去3年間で倍増していると警告した。つまりフランスは、ウクライナ支援や防衛産業の強化、気候変動対策等のために資金繰りに奔走しながらも、今後数年間は赤字削減目標の達成のために数百億ドルの支出削減が必要になるということだ。

 マクロンは、今年初めに欧州のパートナーたちにウクライナに欧州軍を駐留させることを検討するよう要請し、圧倒的反対にもかかわらず撤回を拒否している。問題は、マクロンの考えに重みがないわけではないが、自らの地位が低下している大統領として、この時点での発言は欧州の将来をめぐる戦いにおけるかすかな一撃にすぎない。

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