「ヒップはマイナス10センチ」 バスケ女子日本代表・山本麻衣、小さな体でパリ五輪への扉を開いた秘密

AI要約

山本麻衣(24)は、バスケットボール女子日本代表としてパリ五輪で金メダル獲得を目指し、世界最終予選でMVPに輝いた。

小柄ながらも強力なプレーを見せる山本は、お尻と股関節周りのトレーニングに重点を置き、高いフィジカル能力を獲得している。

山本は広島出身で自然豊かな環境で育ち、桜花学園での猛練習とバスケ3人制での経験が彼女のプレースタイルを形成している。

「ヒップはマイナス10センチ」 バスケ女子日本代表・山本麻衣、小さな体でパリ五輪への扉を開いた秘密

◇記者コラム「パリ目撃者」

 パリ五輪で史上初の金メダル獲得を掲げるバスケットボール女子日本代表。山本麻衣(24)=トヨタ自動車=は、今年2月の世界最終予選・ハンガリー会場でMVPに輝いた。チーム最小の163センチは、攻守で大柄な海外勢に当たり負けせず、パリへの扉を開くシュートを決めた。小柄なのに強力―。相反する2つの要素を成立させた秘密は、10センチも引き締まったお尻にあった。(占部哲也)

 山本の小さな体に何が隠されているのか―。身長163センチ、体重56キロ。キャンパスを歩く女子大生と見た目は変わらない。だが、コートでは20センチ以上高い海外勢に引けを取らない。いや、上回る。始点は、2018年から活動に加わったバスケ3人制代表。東京五輪では、1次リーグで米国を倒し、8強入りした。

 「3人制では体の当たりの強さを体感した。5人制よりもファウルの笛が鳴らない。それで、トレーニングにもすごく力を入れるようになった。フィジカルで当たり負けしないで切り込んだり、シュートを打てることにつながっていると思う」

 2月の世界最終予選・最終戦のカナダ戦。残り40秒でルーズボールに小動物のような俊敏さで即応、高いブロックを越える「ひょいっと」浮かせたシュートを沈めた。パリ当確の得点は、空中姿勢も崩れなかった。東京五輪後に独自の鍛錬を開始。「お尻と股関節周りのトレーニングを増やした」。急加速と急ストップを求められる競技。山本は「止まる時に大きい筋肉を使えば、切り返しも早くなる」と説明した。

 「東京五輪からヒップはマイナス10センチ。今の体は自分も好きで、キレる感覚がある」。お尻回りは引き締まり、高校までの土台に上質なアクセルとブレーキが上積みされた。

 出身地・広島には大自然の恵みがあった。元バレーボール男子代表の父・健之さんの実家が山奥にあるという。「祖父母の家に行くと山道を駆け回って遊んで、川ではメダカとかザリガニを(虫捕り)網でとってましたね。小さい頃、田舎で遊んだのは生きているかな」。山本は目を輝かせ思い出を語った。

 もう一つは桜花学園での猛練習。「高校生レベルではないフィジカル練習があった。体を当てる練習が多くて、当たり方を覚えた感覚がある。(大型選手には)自分から当たるようにしている。『当たられる』のと『当たる』のでは全然違う」。幼少期に培ったバランス感覚に、名門の“秘伝のタレ”が加わった。だから、激しい接触も「怖くない」と言う。

 24歳。小さな体はしつこく、塗り重ねる鍛錬によって「豪快」を身にまとった。3点シュートという必殺のカードも持つ。3年前の東京五輪。バスケ3人制で米国を破った山本は言う。「いくら強いチームでも穴はある。勝てる確率0%という試合はない。可能性を信じて戦う」。史上初の金メダルへ。速さ、強さ、技巧を兼ね備えた最小が、最大の衝撃を与える―。パリっ子が、東洋の“魔法”に目を丸くする日が待ち遠しい。

 ▼山本麻衣(やまもと・まい) 1999年10月23日生まれ、広島県出身の24歳。163センチ、56キロ。小学5年生から愛知県で育ち、昭和ミニバス、藤浪中、桜花学園で日本一になる。高校卒業の2017年にトヨタ自動車アンテロープス入り。2021年東京五輪では3×3女子日本代表として出場、8強入りに貢献。24年2月のパリ五輪世界最終予選・ハンガリー会場のMVPに選出される。好きな食べ物は広島のお好み焼き。