野球のデータ革命は軍用技術から生まれた?プロが使用する「トラックマン」と慶大野球部も使う「ラプソード」 の誕生背景と強み

AI要約

「トラックマン」と「ラプソード」という弾道測定機器が日本野球界に革命をもたらした

「トラックマン」は元々ゴルフ用に開発されたが、MLBで野球に転用され、投球や打球のデータを解析し始めた

選手の能力やポテンシャルを具体的な数字で示すことで、野球界に大きな影響を与えている

野球のデータ革命は軍用技術から生まれた?プロが使用する「トラックマン」と慶大野球部も使う「ラプソード」 の誕生背景と強み

日本野球の「データ革命」は弾道測定機器の導入により訪れたとも言える。

「トラックマン」「ラプソード」などの機器やシステムは「投球、打球のデータを計測する」という同じ目的のために計測された。

しかし、各メーカーやエージェントの設計思想やビジネスモデルは異なり、メリット・デメリットがある。

広尾晃さんの著書『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』(新潮社新書)から、「トラックマン」「ラプソード」誕生の背景とどのように現場で使われているのか、一部抜粋・再編集して紹介する。

「トラックマン」は2000年、デンマークのTRACKMAN社が開発した弾道測定器だ。

アメリカ軍の弾道ミサイル迎撃システム「パトリオット」の開発過程で、ミサイルの弾道を解析するために開発されたドップラーレーダーの技術を応用している。

もとはゴルフのために開発された。各ショットについて、クラブのヘッドスピード、ボールスピード、打ち出し角、スピン量、キャリーディスタンスなど、幅広いデータを検出することができる。

プロゴルファーやコーチたちは、包括的なデータを見て、選手個々の改善点をピンポイントで指摘することができた。

2006年にはPGAツアーで導入され、瞬く間にプロ、アマのゴルファーの間に普及した。今では日本のゴルフ練習場でも「トラックマン」を設置し、データを利用者に提供しているところがある。

この「トラックマン」を野球に転用したのがMLBだ。

MLBは2006年から「PITCHf/x」というスピード測定システムを導入し、試合での投球の球速、軌道、変化量などをオンタイムで表示、公開し、データ野球に革命をもたらしたが、「トラックマン」を活用することで、このシステムをさらに進化させた「スタットキャスト」を開発した。

「トラックマン」と光学高精度カメラを組み合わせることで、投球だけでなく打球もデータ化し、解析することを可能にした。

「スタットキャスト」は2014年の試験運用に続き、2015年にはMLB全30球団に設置された。

MLBでは「トラックマン」は「スタットキャスト」に組み込むトラッキングシステムとして普及したのだ。

これによって投手の球速、回転数、変化量、打者の打球速度、飛距離などのデータは瞬時に公開され、ランキングされるようになった。

平たく言えば「選手のポテンシャル」が、丸裸になったのだ。