在ロサンゼルス日本国総領事が語る大谷翔平の存在意義 曽根健孝総領事

AI要約

ドジャース大谷翔平投手が米国ロサンゼルスで活躍し、日本人コミュニティとの繋がりが深いことが紹介されている。

大谷の存在がロサンゼルスの人々やメディアから注目され、日本人の良さやパワーを示す代表として位置付けられている。

過去の日本人選手の活躍や大谷の成功により、日本人プレーヤーがメジャーリーグで活躍する可能性が広がっていることが強調されている。

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 ドジャース大谷翔平投手(30)が活躍する米ロサンゼルス(LA)は世界で最も日本と縁が深い地域といっていい。

 都市別で海外で最も多くの日本人(邦人)が暮らすのが「ロサンゼルス都市圏」。在留邦人全体の5%、実に6万4457人がいる(昨年10月1日現在)。大谷もその1人。LAも含む南カリフォルニアとアリゾナ州を管轄し、在留邦人をサポートする在ロサンゼルス日本国総領事館の曽根健孝総領事(59)に大谷、米国での大谷、そして大谷が日米に与えるものなどについて聞いた。【取材・構成=八反誠】

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 野球少年だった曽根総領事は大谷フィーバーが一層の盛り上がりをみせ、夏休みの日本からやってくる人も増えている中、「日本から来ているみなさんをお手伝いするのが仕事」と邦人サポートをはじめ、総領事館をあげて日々、汗をかく。重い職責がある総領事は、日本と米国をつなぐ存在でもある。曽根総領事はまず、ドジャースのユニホームを着た大谷が、より一層の存在感を示しているとみている。

 「エンゼルス時代からすごく注目されていましたが、ドジャースに来たことで、特にロサンゼルスの人たちもそうですし、メディアも彼を取り上げる機会が増えています。すべての人が、すごく大きな期待をしている。加入が決まった瞬間、ワールドシリーズ優勝に近づいたという実感を持った方も多いようです。

 実際に大谷選手自身も、入団会見でワールドシリーズに行きたい、ドジャースでさらに上を目指していく、そういったチームの中で自分も頑張りたいと言っておられました。

 そのあたりも含め、いろんな意味で、こちらの日本人、日系人、すべてのアメリカ人に、彼の人としての素晴らしさという部分も伝わっていると思います。そこから、『やっぱり日本人っていいな』と思ってもらえるようにつながっていけば、うれしいと感じています」

 その注目度はもはや、一選手のそれを超越し規格外の域。何げない振る舞い、一挙手一投足が日本人の代表として、米国でも伝えられる存在になっている。日本にもほぼリアルタイムで伝わり、瞬時に拡散する時代。曽根総領事は、大谷効果をより大きな視点で考えている。

 「その人柄、礼儀正しさ、何より野球に対する取り組み方の素晴らしさ。ドジャースには山本選手もいらっしゃって、2人で仲良くやっている様子も伝わってきます。

 そういった日本のパワー、日本の良さ。もしかしたら、時々、我々日本人が忘れてしまっているかもしれない日本の、日本人の良さ、そういったものを、こちらで発揮していただくことで、さらに多くの日本人、日系人の方々に、再発見していただきたい。

 なおかつ、それが日本にも伝わり、日本にもいい影響を与える、そうつながっていけば、最高だと思います」

 海外のどの都市より、日本との関係性が深く、身近なLA。日本の良さを伝える世界に3つだけの拠点「ジャパン・ハウス」もある(残る2つはロンドンとサンパウロ)。ここでは和食、アニメ、漫画、伝統文化、“カワイイ”といったカルチャーなどを発信している。大谷同様に日本が世界に誇る部分、強みは多く、LAでは長い歴史の中で、それらを受け止める土壌が育まれてきた。

 すべては先人からの積み重ねで、一朝一夕のものではない。大谷の超人的な活躍、日本人初のメジャー本塁打王など、歴史を塗り替える偉業はもちろん大谷自身が成し遂げたものである。ただ、曽根総領事は歴史にも目を向ける。

 「今に至る一番のきっかけは、やはり野茂選手なんだろうと思っています。彼がこちらに来た時、私ももう外務省で働き始めていたのですが、当時、多くの人が『日本人はメジャーで通用しない』と勝手に思い込んでいたところがあったような気がします。

 野茂選手が、まずドアを開け、広げられた。単に野球技術のみならず、こちらの野球のシステム、制度上どうやってメジャーに来るのかなど、彼によっていろんな可能性が広がった。そこから、イチローさんなど多くの選手の活躍につながり、今がある。そう感じています。

 野茂選手のパイオニアとしての役割は、やはり大きかった。それをサポートしたのがドジャース、当時の(球団会長)ピーター・オマリーさんだった、という部分、その流れが同じドジャースの大谷選手につながっているという点も、感慨深いものがあります」

 野球に詳しく、スポーツを愛する曽根総領事の管轄地域では、大谷をはじめ多くの日本人プレーヤーが活躍している。米国政府機関の関係者などと会えば、当然、話題にのぼる。「特に、こちらの市の関係者の方にお会いすると、皆さんやっぱり『ショウヘイはすごいね』と言われます。話も自然と弾みますので、ありがたいことです(笑い)」。大谷は、総領事や領事館の職員らとともに、フィールド外でも同じように、地域をつなぐ大きな大きな存在となっている。

 ◆曽根健孝(そね・けんこう)1965年(昭40)生まれ、北海道出身。小学校では野球少年で「4番サード」。中学、高校はバスケットボール部。一橋大卒。89年外務省入省。2011年7月に、在米日本国大使館の参事官に。13年9月に、北米局北米第一課長。14年7月、第2次安倍内閣で内閣副広報官などを務める。16年7月から約3年は在インド日本国大使館公使。その後、22年9月に在ロサンゼルス日本国総領事館総領事に着任。