「校歌の質問はタブーなのか…」迷う現地記者に京都国際の選手・スカウトが口を開いて…「学校に言うても動かないし」高校野球ウラ話

AI要約

京都国際の校歌が韓国語であることが話題となり、校歌に関する取材を行う記者の体験が描かれている。

京都国際は在日韓国人の民族学校として設立されたが、現在は日本人も受け入れる学校であり、野球部もプロ野球選手を多数輩出している。

選手たちは校歌を歌えるが、意味まで理解しているわけではなく、校歌はネット上で議論を巻き起こす可能性があることが示唆されている。

「校歌の質問はタブーなのか…」迷う現地記者に京都国際の選手・スカウトが口を開いて…「学校に言うても動かないし」高校野球ウラ話

夏の甲子園を制した京都国際。その盤石の強さとともに話題を集めたのが、校歌である。「選手や監督に質問をしていいものなのか」。現地記者が京都国際に密着した。【全3回の1回目】

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 衝撃という言葉では足りなかった。

 8月17日の3回戦第2試合、京都国際が西日本短大附に勝利した。前奏を聴きながら、ベンチ裏のミックスゾーンへ移動するためにスタンドを後にしようとしたときだった。

 背中から、聞こえてくるはずのない言語が耳に入ってきた。まったく予期せぬ響きに思考が追いつかない。アイスコーヒーだと思ってウーロン茶を飲んでしまい、一瞬、何の飲み物だかまったくわからなくなる感覚と似ていた。

 徐々に冷静さを取り戻す。

 韓国語? なんで? 

 ミックスゾーンへたどり着くなり、旧知の記者に尋ねた。

「京都国際の校歌って、韓国語なの?」

 すると、こう呆れられた。

「何を今さら……」

 京都国際が初めて甲子園の土を踏んだのは2021年の選抜大会だった。そこで初勝利を挙げ、続く夏も甲子園に出場し、今度は3勝した。

 3年前は新型コロナの影響で厳しい入場制限がかけられていたとはいえ、すでに4度、韓国語の校歌が甲子園に流れ、それなりに話題になっていたようだ。

 私はいずれの大会も取材に行ってない。しかも、その年は大きな週刊誌連載の原稿に追われ、ほとんどテレビも新聞も見ていなかった。そのため、まったく知らなかったのだ。

 好奇心をそそられ、その記者に重ねて質問した。

「校歌について、聞いてもいいものなの?」

「いいんじゃないですかぁ~」

 私は暇そうにしている選手をつかまえては校歌を歌えるのか、校歌の意味はわかっているのか、どんな学校なのか等々、矢継ぎ早に質問をした。

 選手たちは歌えることは歌えるものの、意味までは深く理解していないようだった。中には「歌えません……」と口にする選手もいた。

 京都国際には韓国の歴史や韓国語を学ぶ授業があり、修学旅行は韓国へ行くのだという。全校朝礼も韓国語で、選手たちは何を言っているのかまったくわからないそうだ。

 私は本サイトの担当編集者に興奮気味に取材報告をした。こんな高校があるんだよ、と。ところが、編集者は難色を示した。

「京都国際の校歌の記事は、ネットが荒れるんですよ……」

 そういうものなのか。私は正直、そのあたりの事情に疎かった。

 京都国際のことをネットで調べた。同校は1947年に在日韓国人の民族学校として設立された。ところが、その後、経営が傾き、2004年に現在の校名に変更し、同時に日本人も受け入れ始めたのだという。

 野球部は1999年に創部されており、当時はほとんど韓国人だったようだ。今、全校生徒は138人で、そのうち約8割が日本人だ。野球部員は全校生徒の約半分にあたる61名おり、彼らも大半が日本人だという。

 京都国際は2019年から5年連続で、計8人のプロ野球選手を輩出していた。過去まで遡れば16年間で11人ものプロ野球選手を誕生させている。中学生の間では韓国色の強い学校だというイメージ以上に「プロに行けるチーム」として支持されているようだった。