【NBA】スティーブ・ナッシュがネッツを率いた経験を振り返る「コーチとしてキャリアを積みたいとは思わない」

AI要約

2008年、サンズでのゴラン・ドラギッチはスティーブ・ナッシュの控えとして活躍し、ナッシュからのサポートを受けながらNBAキャリアをスタートさせた。

ナッシュは2020-21シーズンからネッツのヘッドコーチとして指揮を執り、スター選手たちとのコミュニケーションに苦労しつつもチームをまとめようとしたが、チーム状況のトラブルにより2シーズンで退任することとなった。

スティーブ・カーはナッシュが優れたコーチとしての素質を持っていると評価しつつも、NBAにおける安定した環境の重要性を指摘し、ナッシュの今後に期待を寄せた。

【NBA】スティーブ・ナッシュがネッツを率いた経験を振り返る「コーチとしてキャリアを積みたいとは思わない」

ゴラン・ドラギッチがNBAに挑戦した2008年、サンズでの彼の役割はスティーブ・ナッシュの控えだった。2005年と2006年に2年連続でMVPを受賞したナッシュはリーグ屈指のスター選手だったが、まだ英語を満足に話せず、アメリカで暮らす環境に馴染むのに苦労していた若いドラギッチをコート内外で支えた。ドラギッチは「彼は最高のメンターだった。最初のチームで彼と一緒になれた幸運が、僕のNBAキャリアを軌道に乗せてくれた」と感謝を惜しまない。

そのドラギッチが故郷であるリュブリャナでの引退試合にナッシュを招いたのは当然のこと。ナッシュも『愛すべき後輩』のためにスロベニアの首都までやって来た。いつも以上にリラックスして楽しい気分だったのか、これまで話してこなかったネッツでのヘッドコーチ時代について語っている。

ナッシュは2020-21シーズンからネッツのヘッドコーチとなり、2022-23シーズンの開幕直後に退任している。2020年夏の時点で、コーチ経験のない彼がケビン・デュラントとカイリー・アービングを擁する優勝候補のチームを指揮するのは驚きの人事だった。前任のケニー・アトキンソンはネッツを低迷から抜け出させた実績があったものの選手をガチガチの戦術で縛るタイプで、デュラントとカイリーはこれを嫌った。『スター選手の心理』を理解し、彼らを満足させながら勝つことがナッシュに課されたタスクだった。

しかしネッツはトラブル続きだった。自慢のスターパワーはケガで十分に機能せず、カイリーは心を閉ざし、ジェームズ・ハーデンは勝利より楽しむことを優先するチームの雰囲気を嫌ってチームを去り、代わりに獲得したベン・シモンズは使い物にならず。2022年オフにはデュラントまでトレードを要求。3年目のシーズンで2勝5敗と開幕ダッシュに失敗した時点で、ナッシュはネッツを去った。

「コーチ業をやるつもりはなかったんだが、ネッツで特別な状況が起こり、私のドアが叩かれた。すべてはあっという間の出来事で、フロント、選手、エージェントを管理するという、今までにやったことのない仕事に追われた」とナッシュは語る。

「私は選手に対して正直であろうとした。明確に、率直に伝えた。選手を迷わせないためにはコミュニケーションがカギで、私は現役時代と同じように周囲の模範となることでリーダーシップを取ろうとした。ただしコーチのリーダーシップはより細かいところまで配慮しなければならないのに、自分がチームの一員だと感じられる場面は多くない。試合前、ハーフタイム、試合後の5分間のミーティング。チーム全体と話ができるのはそれだけだ」

「コーチ業は素晴らしい経験だったが、コーチとしてキャリアを積みたいとは思わない」とナッシュは言う。「私は今、自分の子供たちにバスケを教え、それを通して人生を教えている。私は自分でそれを選んだ。今は家族との時間を大切にしたいんだ」

振り返るに、ナッシュが率いた時期のネッツはスター選手の発言力が強すぎ、そしてデュラント、カイリー、ハーデンのそれぞれが別の方向を向いていた。ナッシュはそのリーダーシップとカリスマ性でそんなチームを何とかコントロールしていたが、最終的にはスター選手のケガにより結果が出ず、退任することとなった。

ネッツのヘッドコーチ就任以前にアドバイザーとしてナッシュを迎え入れていたウォリアーズのスティーブ・カーは「ナッシュは素晴らしいコーチになるためのすべての資質を備えている」と言い、チーム事情に振り回された彼の状況を憂いた。「選手やフロント、オーナーの気まぐれにより状況が二転三転する、そんなことがコーチにはよく起こる。このリーグでコーチとして成功するには、安定した環境が欠かせない。ウォリアーズでそれを得た私はラッキーだった。ナッシュにはもっと安定した環境が必要だ」

しかし、NBAでこの『安定した環境』は極めて稀なもの。ナッシュはそれを理解しているからこそ、NBAのコーチ業に戻ってくるつもりがないのだろう。