F1、シーズン中の”非対称ブレーキシステム”禁止はなぜ? チームの不正取り締まり以外の理由とは

AI要約

F1の技術規則が変更され、非対称ブレーキシステムが禁止された背景には、将来のレギュレーションの整理がある。

これにより、チームは2026年以前から新たな規則に適応できるようになる。

目的は明確で、将来のF1において違法な技術デバイスを排除することである。

F1、シーズン中の”非対称ブレーキシステム”禁止はなぜ? チームの不正取り締まり以外の理由とは

 FIAはF1がサマーブレイク中に技術規則を変更し、非対称ブレーキシステムを禁止したことを受けて、様々な憶測が飛び交っている。

 直近のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)では多くの規則改正と将来的なルールが批准されたが、その中でブレーキシステムに関する条項が追加された。

 変更されたF1技術規則第11.1.2条は以下の通り。後半の1文が加えられている。

『ブレーキシステムは、各サーキットでブレーキパッドにかかる力が同じ大きさになるように設計され、ブレーキディスク上で対になるように作用しなければならない。ある車軸に対して非対称な制動トルクを系統的または意図的に発生させるシステムや機構は禁止されている』

 技術規則の性質上、シーズン途中で変更されることはあまりないため、今季ひとつ以上のチームがこうしたデバイスを使用しており、FIAがそれに対応したのではないかという憶測を呼んだ。

 マイアミGP以降調子を落としているレッドブルには、使用していたシステムが禁止されたのではないかという荒唐無稽な非難が投げかけられ、マックス・フェルスタッペンがオーストラリアGPでリタイアしたのもこれと関係があるのではと指摘する声さえあった。

 しかしFIA上層部の関係者によれば、この変更はチームが現在行なっていることに対する取り締まりではなく、将来的なレギュレーション強化のためのものだという。

 FIAの広報担当者はmotorsport.comに次のように語っている。

「どのチームもそのようなシステムを使用していたという事実はない」

 結局のところ、非対称ブレーキシステムの合法性に関しては、今回の変更によってほとんど変わっていないのだ。FIAが技術規則第11.1.2条に加えた変更は、ブレーキパッドにかかる力がキャリパーの左右で等しいことを意味する原文を補足するものだ。

 新たに追加された文章では、フロントまたはリヤのブレーキ回路が非対称の制動トルクを発生させることを禁止している。

 そのため、左右どちらかの車輪(通常はイン側の車輪)をもう片方の車輪よりも強く制動することでクルマを曲げる、一般的にブレーキステア・システムと呼ばれるモノは明確に禁じられている。

 ただFIA関係者によると、もともとの規則の文言は、非対称ブレーキシステムを違法とするのに十分なものだったという。

 ルール変更の真の動機は、2026年に向けてレギュレーションを整理し、次のルールの時代に何が許され、何が許されないかをより明確にすることにあった。

 2026年レギュレーションを策定するための継続的な議論の一環として、非対称ブレーキシステムを完全に違法とする文言が追加されたのだ。

 そして2026年以前にわずかなグレーゾーンを悪用しようとする者がいないことを確認するため、チームからの要請を受けて、2024年と2025年のレギュレーション両方にこの新しい条項を追加することとなった。