【NPB左腕を多数輩出】甲子園準決勝に挑む京都国際 勝利の秘訣は「サウスポー2枚看板」 なぜ「左腕王国」は誕生したのか

AI要約

京都国際が左腕投手を重点的に育成し、甲子園で好成績を収める

監督と部長の共に1983年生まれの同級生コンビがチームを率いる

指導方法やスカウティングにおいて、チームの特徴と成功の要因が浮かび上がる

【NPB左腕を多数輩出】甲子園準決勝に挑む京都国際 勝利の秘訣は「サウスポー2枚看板」 なぜ「左腕王国」は誕生したのか

 第106回の甲子園も準決勝を迎える。小牧憲継監督と宮村貴大部長という共に1983年に生まれた京都成章の同級生コンビに率いられ、春のセンバツで敗れた青森山田とのリベンジマッチに臨むのが京都国際だ。同校は好左腕の森下瑠大(現・横浜DeNA)が2年生だった2021年に初めて甲子園の土を踏み、その年の夏には初めて京都大会を制して選手権ではベスト4に進出。京都韓国学園を前身とする野球の新興校ながら、いまや京都のみならず近畿の高校野球をリードする存在である。

 京都国際は2008年以降、11人ものプロ野球選手を輩出(育成契約含む)しているが、近年は2022年ドラフト4位の森下をはじめ、左腕投手の育成に長けた学校として注目が集まる。昨年のドラフトでも同校から3選手が指名され、そのうち広島の育成3位・杉原望来と福岡ソフトバンクの育成8位・長水啓眞がサウスポーだった。

 そしてこの夏の甲子園でもエース左腕の中崎琉生が初戦の北海道・札幌日大戦(7対3)と3回戦の福岡・西日本短大付戦(4対0)で完投し、やはり2年生左腕の西村一毅が2回戦の新潟産大付戦(4対0)と準々決勝の奈良・智弁学園戦(4対0)と2戦連続で完封した。ふたりの左腕が交互に先発・完投することでチームは勢いづいてきた。

 なぜこれほどの左腕王国が誕生したのか。小牧監督が明かす。

「左ピッチャーばかり声をかけているわけではないんです。ただ、最近は森下に憧れて入ってくる子が多いのと、宮村部長が左ピッチャーなので、左ピッチャーの特徴がわかっているというのが育成においてはうまくいっているような気がします。右ピッチャーもいるんですが、どうしても序列をつけた場合に左の選手のほうが上になる。左ばかり力を入れているように思われるのは、投手コーチを担当する部長からしたら歯がゆいことだと思いますね(笑)」

 小牧監督の母校である京都成章は、1998年夏の甲子園決勝で松坂大輔のいた横浜と対戦し、松坂が京都成章打線をノーヒットノーランに抑え、横浜は春夏連覇を遂げた。小牧監督は翌年に同校に進学し、3年時に主将を務めたが、そのチームのエースだったのが宮村部長だった。宮村部長が話す。

「京都国際のやり方として指導陣が完全に分業で、責任を持って指導にあたるというのが大きな特徴だと思います。『左投手を育てるコツは?』と、みなさんに質問されるんですが、私としては右左同じ指導をしているつもりです。ただ、私自身が左投手だったことで、感覚的な部分が左投手には伝わりやすいのかなとは思いますね」

 宮村部長が指導する上で大切にしているのが「可動域の広さ」だという。

「(肩関節の)可動域を広げ、体の連動性を生むことをピッチャー陣には落とし込んでいます。私や小牧は入学してくれた選手を育てるのが主な役割。選手勧誘に関してはコーチに一任しています」

 現在の高校野球はスカウティングが“強化”の第一歩であり、とりわけ近畿圏の逸材には熾烈な獲得競争が展開される。京都国際で選手勧誘を担当しているのが、岐阜城北高校出身の岩淵雄太コーチだ。

「はい、スカウティングに関しては一任されています。監督や部長は、誰が入学してくるのか、はっきりとは把握していないと思いますよ(笑)。でも、それがいいと思います。たとえば、監督や部長が中学生の現場を回って口説いて入学してくれた選手だと、監督や部長も重宝しがち。その点、京都国際では僕しか回っていないので、頑張って、成長した選手には監督や部長が平等にチャンスを与えていると思います」

 近年は声をかけるばかりではなく、自ら京都国際に入りたいと志願してくるケースも多いだろう。

「森下に続き、杉原がプロに挑戦するなかで、京都国際=左ピッチャーで、“いつも左の好投手を育てるよね”というようなイメージが進学を考えるご家庭や中学生のチームに浸透し、いわゆる京都国際としてのブランディングができたことが大きいように思います」