根尾昂、藤原恭大…大阪桐蔭“黄金世代”を「最も追い詰めた」“偏差値68”府立高監督がなぜ野球インフルエンサーに?「学校に迷惑をかけましたし…」

AI要約

2018年の大阪桐蔭高校が根尾昂、藤原恭大ら多くのプロ選手を輩出し、高校野球界で圧倒的な実力を示す。一方、府立進学校は大阪桐蔭を黒星寸前まで追い詰める活躍を見せていた。

府立進学校の監督である達大輔先生は、指導者の道を離れてSNSで1万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーに転身した経緯が明らかにされる。

達は寝屋川高校の監督として素晴らしいチームを育て、その後SNSを活用して、高校野球界において注目を集める存在となった。

根尾昂、藤原恭大…大阪桐蔭“黄金世代”を「最も追い詰めた」“偏差値68”府立高監督がなぜ野球インフルエンサーに?「学校に迷惑をかけましたし…」

 根尾昂、藤原恭大ら多くのプロ選手を輩出した2018年の大阪桐蔭高校。甲子園でも春夏連覇を達成するなど、全国でも圧倒的な実力を見せた。一方で、そんな「最強チーム」に公式戦で黒星をつけかけた府立進学校があった。当時、躍進著しかった同校の監督は、なぜ指導者の道を離れ、SNSで1万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーになったのか。本人に話を聞いた。《全2回の1回目/2回目を読む》

「校長が話したいことがあると仰っていて、校長室に来てもらえますか」

 体育教官室で野球部の監督と話していたら、達大輔先生がそう言って入ってきた。達は身振り手振りがはっきりしていて、声が大きく物言いも明確な46歳の体育教師だ。応対も丁寧で人懐っこい。

 そんな一見すると普通の公立高校の教師に興味を持ったのは、達のツイッター(現X)が高校野球界では有名で筆者のタイムラインにも引っかかったからだ。4年ほど前のことだったと思う。

 そこから遡って2018年。この年の高校野球は大阪桐蔭が甲子園で春夏連覇を果たす。そう、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、柿木蓮(日ハム)、横川凱(巨人)というプロ選手を輩出し、史上最強チームとも言われた。

 このチームを黒星寸前まで追い詰めた府立高校があった。センバツで優勝、その約1か月後の大阪春季大会の準々決勝、大阪桐蔭は寝屋川に9回裏2死まで3対4とリードされていた(そこから逆転勝ち)。

 寝屋川の創立は1909年。毎年、京大、阪大、神戸大を含め国公立大に100人前後が進む府立の進学校だ。学業優先、グラウンドも狭く部活には不向きな普通の高校だ。

 ただ、1956年の春と57年の春夏の3回、甲子園に出場している。57年は春も夏も1勝を挙げて、いずれも2回戦で王貞治投手のいた早実と対戦していて0対1で敗れている。夏には王投手がノーヒットノーランを達成した試合で校名が挙がることがある。

 過去にそんな歴史があったとしても、このご時世で大阪桐蔭に勝ちそうになったから、6年前、大阪のファンには驚きがあった。

 その時の寝屋川の監督をしていたのが達だった。寝屋川の卒業生で母校の監督9年目。多彩な走塁が持ち味のチームを作っていた。

 達はその2年後からツイッターを始めて、高校野球ファンや関係者からフォローされるようになっていく。

「きっかけは部員集めの広報です。私立に立ち向かうには素材のいい選手が来てくれること。どうやって部員を集めるか。中学生の大会を見に行ったりもしますが、SNSを使うことは近道の一つです」

 立ち上げたときの自己紹介に「本気で甲子園を狙う」と添えた。コアなファンは府立の進学校監督がそうぶち上げたから、気になるというものだ。

 2020年1月に発信を始め、フォロワーは徐々に増えていって全国の監督、指導者、メディア関係者らが加わっていった。新聞、web記事、単行本に取り上げられた。フォロワー数は2年間で1万人に達した。

 その後、2020年10月に新しいアカウントに切り替えて23年に1万人、24年6月に1万5000人、そして現在は1万7000人にフォローされている。これは一私人としては異例の速さと多さ。インフルエンサー的な存在になったと言ってもいい。

 高校球界で公立の部員は合同チームが増えるなど減る一方だが、寝屋川は伝統校で地域での人気校。野球部員も当時で60人ほどがいて府内公立では有数の部員数を誇る。

 達と寝屋川は順風満帆、さらに上を目指す下地は固まりつつあったかに見えた。ところが、本人の言葉を引用すれば「母校に対する特別な感情からくる完全に間違えた行動」を起こしてしまう。