「大谷翔平という最高のお手本もいて…」ドジャース山本由伸が“空白の2カ月”で立ち返った原点とは? 完全復活への秘策「もう全力でいけます」

AI要約

山本由伸は怪我からの復帰に向けて全力で取り組んでおり、今は無事にトレーニングを重ねながら実戦復帰に向けて準備を進めている。

彼は過去にも怪我で離脱した経験があり、今回の長期離脱は初めてのことだったが、挫けることなくトレーニングに取り組んでいる。

山本は復帰に向けて新しい投球メカニズムを開発し、進化するための努力を惜しまない姿勢を見せている。

「大谷翔平という最高のお手本もいて…」ドジャース山本由伸が“空白の2カ月”で立ち返った原点とは? 完全復活への秘策「もう全力でいけます」

 置かれている状況とは裏腹に、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸は清々しく爽やかな表情だった。

「初めての経験ですよね、これだけ実戦で投げていないのは。日本でもなかった経験だと感じています。ただ、もう全力でいけます。順調ですよ!」

 山本は6月15日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦で上腕三頭筋の張りを訴えて降板した。球団から下されたメジャー復帰登板の目安は9月。オリックス時代にも複数回、脇腹を痛めて離脱したことがあったが、2カ月以上の長期離脱は自身にとっても初めてのことである。

 8月6日の練習後、筆者のもとに歩み寄ってきた山本は、笑みを浮かべながら「全力」という言葉を何度も口にした。

「全力で腕を振れる状態を作る」

 そのためにはどんなメカニズムが最適か――山本はこれを最大のテーマに考えてきた。

 オリックス時代の先輩である金子千尋や平野佳寿らが作り上げてきた「瞬時に最大出力を出せる投球技術」を習得する投手文化で育ったきた彼にとって、「全力」は現在の「やり投げ投法」を編み出す上では重要なキーワードだった。

 身体を縦方向に使い、前足である右足を突っ張るように踏み出す。伸びた右足が梃子の原理を生み、最大出力を生み出す。すべては最後に上がってくる腕を鞭のように使い、鋭く、速く、強く、腕を振る為に考え出した投法だ。

 近代野球では稀に見る投球方法に当時の球団内で賛否があったのはよく知られた話だが、しかし、山本の性格、野球への姿勢、そして何よりも最適な投球メカニズムを構築する発想力と修正能力を含めた適応力を評価し、最終的にはそのピッチングフォームを触ることはなかった。

 そして、その期待に応えるように日本の頂点に駆け上がり、MLBの名門球団から最大級の評価を得た。

 しかし、MLB挑戦1年目の初夏に悪夢は起きた。当初は復帰の予定すらも立てられないという報道もあったほどで、この2カ月間は「腱板損傷」という投手にとっては最も恐怖が襲う症状と向き合ってきた。

「ゲームを観ていると早く戻りたい、チームのプラスになりたいと考えてしまい……うーん、何て言えばいいですかね。そのあたりは、今はまあ話さないようにします。わかってください」

 言葉尻からも、表情からも、不安と恐怖を感じざるを得なかった。

 だが、山本はいま一度原点に立ち返った。回復ではなく、より進化するためのトレーニングに励んだのだ。

 4本の矢を槍投げのように遠投し、ラストは同じ槍投げ投法で1球を投じる。これを何セットも繰り返す。美しい弧を描く槍の滞空時間は伸び、その距離が順調さを物語った。この練習での一投一投をより大事に、丁寧に、確認作業を行いながら投じる。8月に入ってからは、徐々に実戦復帰に向けての手ごたえを感じられるようになった。