【関屋記念回顧】トゥードジボン、馬場と騎手心理を味方にした逃げ 2着ディオとのセットもオトク

AI要約

新潟外回りが誕生して24年目の夏を迎える。レコードタイムをみると、前期に樹立された5つのコースでのレコードが後期に破られていない。

馬場の作り方の変化や各陣営、各騎手の対策を考慮すると、新潟芝1600mのレコード更新は困難を極める。

関屋記念での逃げ切り例やトゥードジボンの競馬戦術は、新潟芝の特性を示唆する。

【関屋記念回顧】トゥードジボン、馬場と騎手心理を味方にした逃げ 2着ディオとのセットもオトク

新潟外回りが誕生して24年目の夏を迎える。2001~12年を前期、13~24年を後期と区切り、レコードタイムをみると、芝全9コースのうち直線1000m(02年カルストンライトオ、53.7)を筆頭に、5つのコースで前期に樹立されたレコードが後期に破られていない。

後期に更新された4つは芝1800m(24年クルゼイロドスル、1:44.1)、芝内2000m(23年デッドリー、1:58.9)、芝内2200m(18年ダブルフラット、2:10.8)、芝内2400m(21年レイオブウォーター、2:24.4)。内回りが目立ち、重賞があるコースでの更新がない。

芝1600mも12年ドナウブルーが関屋記念でマークした1:31.5がレコード記録のまま。12年間も破られていない。高速決着が売りの新潟は確かに改装直後、マグナーテンが1:31.8で連覇するなど、他場ではお目にかかれない高速時計が連発した。

近年の新潟は必ずしも高速決着が頻発しない。馬場の作り方の変化もある。夏開催前に芝の張替えのほかにエアレーション作業を入れ、馬場を軟らかくつくっている。硬度が下がれば当然速い時計は出にくい。エアレーションは13年から導入しているそうで、後期のレコード更新が少ないのは、そういった背景もある。

もうひとつ、各陣営、各騎手が新潟芝1600mの傾向と対策をつかみ、それを馬づくりやレース展開に反映させている点もあげられる。なにせ最後の直線は658.7mと長い。スタンドから外回り4コーナーを望むと、陽炎が揺れているほどの熱気。直線で末脚勝負に挑むには、いかに前半でスタミナをロスしないかが重要となる。

当然スローペースが頻発し、高速決着が発生しにくい。レコード更新には前後半トータルのスピードが必要不可欠。新潟芝1600mのレコード更新はもはや至難の業となりつつある。

そして、スロー頻発が逃げ切り多発にも寄与する。今年のトゥードジボンは前後半800m47.7-45.2で、後ろの馬は極限以上の末脚がないと逆転できない。新潟芝はそんな物理的にひっくり返せない記録を生む。奥深いコースだ。

関屋記念逃げ切りは01年以降、トゥードジボンで4頭目。レッツゴーキリシマ、レッドアリオン、マルターズアポジーはそれぞれ上がり600m33.2、33.3、34.3。マルターズアポジー以外はすべてスローに持ち込んで、後続を惑わせた。トゥードジボンもラスト600mは33.3。関屋記念を逃げ切るお手本のような競馬だった。

そのラップは12.5-10.9-12.0-12.3-11.9-11.2-10.9-11.2。序盤でハナに行き、ひと呼吸置いて後半勝負へ。内回りとの合流地点あたりで最速10.9を刻んで好位勢を封じ、最後までラップを落とさず差し馬に追撃のスキを与えなかった。

これほど理想的なラップを刻んだトゥードジボンは、絶好の状態だったにちがいない。父イスラボニータはその父フジキセキ譲りの高速決着への強さと母の父コジーンの成長力を背景に6歳シーズンで重賞2勝。引退レースの阪神Cを勝った。トゥードジボンも5歳ながら、ここからが充実期。秋には得意の京都でGⅠタイトルを狙う。