宮崎商、アクシデントで7度Vの強豪からの金星逃す 令和の県勢初勝利ならず【甲子園】

AI要約

宮崎商が中京大中京に1点差で敗れ、夏の甲子園での初勝利を逃した悔しさを語る。

アクシデントによる失点や選手の奮闘、将来への意気込みなど、試合の様子や選手の心境を紹介。

中村選手の負傷や克服の姿勢、チームメンバーの努力とプロ志望について語られている。

宮崎商、アクシデントで7度Vの強豪からの金星逃す 令和の県勢初勝利ならず【甲子園】

 ◆全国高校野球選手権1回戦 中京大中京4―3宮崎商(10日・甲子園)

 夏の甲子園7度優勝を誇る強豪からの金星は、思わぬアクシデントで遠のいた。16年ぶりに夏の甲子園のグラウンドに立った宮崎商は中京大中京を相手に1点差の惜敗。令和に入って県勢未勝利の甲子園で初勝利を刻めなかった。「選手たちが頑張って自分たちの展開でゲームを運んでいたんですけど。私がいろいろしてあげれれば逃げ切れと思うんですが、悔いが残りました」と橋口光朗監督は一度はリードを奪う展開から逆転を許した惜敗に悔しさを見せた。

 7回までは互角の戦いだった。4回に先制を許したが、6回に同点に追いつき7回に4番上山純平(3年)の適時打で勝ち越しを決めた。残り2イニングを必死に守って逃げ切るだけ。「最後に1点上回って勝つ」。1年間取り組んできた「宮商野球」を大舞台でそのまま体現していた。

 ところが7回裏にアクシデントが起きた。宮崎大会で遊撃と抑え投手の2役でチームを勝利に導いてきた中村奈一輝(ないき、3年)が守備中に左脚のふくらはぎがつり、マウンドに立てなくなったのだ。治療を経て遊撃に戻ったが、宮崎大会ではピンチになればカウントの途中でも遊撃から緊急登板してリードを守ってきた「守護神」のアクシデントで、投手交代に誤算が生まれた。7回2死一、三塁から先発の上山が2連打で2失点と逆転を許した。「上山はよく頑張ったと思います。もし中村をマウンドに上げて抑えたとしても、遊撃の守備に戻れなくなる恐れがあった。彼が抜けたらチームが成り立たない」。橋口監督は精神的にもチームの支柱となっている中村の存在の大きさをわかっていた。不運なアクシデントにも橋口監督は「そういうのも含めて甲子園なので」と聖地の怖さを改めて痛感した。

 中村は「先頭打者を遊ゴロに取ったとき痛みがきたんです。大丈夫かなって」。ベンチに戻り8分間の治療を受けて再び遊撃の守備につくとベンチからは「ナイキ、お前が引っ張っていけ」と声をかけられた。「みんなに支えられているんだなと思った。出るからには全力でやりきらないと試合に出ない人たちに申し訳ないと思った」。マウンドに上がらなくても遊撃の守備でみんなを引っ張ろうと気持ちを入れた。9回1死から打席に立ったが空振り三振。「足がつってでも塁に出ようと思ったんですけど、最後にカットボールに手が出てしまった。悔いが残ります」と最後の打席を振り返った。

 3年前は新型コロナウイルス感染がチーム内に広がり初戦を戦わずに出場辞退した。「3年前の先輩の分も勝ちたい」と意気込んで臨んだ甲子園だった。試合の2日前には宮崎県で最大震度6強の地震が発生するなど、様々な状況が選手を取り巻いていた。「先輩の思いも背負ってプレーしようとみんなで話していた。勝てなかったけど、先輩たちに泥くさいプレーを見せられたのは良かった。宮崎の人たちにも少しでも勇気づけるプレーをできたかなとは思います」と中村は振り返る。

 この悔しさは次のステージで晴らす。「プロ志望届を出します」とチームを引っ張り甲子園まで来た中村は将来をまっすぐ見つめていた。(前田泰子)