【虎になれ】流れを巨人に渡したあのビッグプレーのワケ…知将・野村克也監督の“答え”思い出す

AI要約

知将・野村克也が阪神監督1年目だった99年、あるクイズを出してきた。そのクイズの答えは、2死満塁のピンチで二塁走者をけん制で刺すことだった。

巨人対阪神の試合では、山崎伊織のけん制球が効果的で、野口恭佑をアウトにするプレーが生まれた。これが試合の流れを変えるきっかけとなった。

野口にとっては厳しい経験だったが、そのプレーの重要性を理解し、次の機会に活かしてほしい。野球は流れのプレーであり、1つの結果が次につながっていく。

【虎になれ】流れを巨人に渡したあのビッグプレーのワケ…知将・野村克也監督の“答え”思い出す

<巨人2-1阪神>◇16日◇東京ドーム

 知将・野村克也が阪神監督1年目だった99年。取材をしながら野球を教えてもらった日々だ。あるとき、こんな“クイズ”を出してきた。以前にも少し触れたことがあるが、はっきりと思い出したので書く。

 「自軍が1点リードしている9回裏の守備は2死満塁のピンチ。打席には強打者がいる。どうやってアウトを取るのがベストか」。こんな問題だった。いろいろと考えたが、野村は首をタテに振らない。しばらくしてニンマリしながら、こんな“答え”を口にした。

 「正解は二塁走者をけん制で刺す、や。オレからすれば、これが一番賢い終わらせ方や」-。怖い打者と勝負せず、勝ち越しサヨナラのホームを踏もうと躍起になっている二走をスルッと刺す。おしゃれやろ…ということだった。

 試合を見ていた虎党なら、なぜ、ここでそれを思い出したのかはすぐ分かってもらえると思う。才木浩人、山崎伊織の本格派若手右腕の投げ合いによる接戦の中、大きなプレーが生まれたからだ。

 1点ビハインドの5回、阪神は2死一、二塁のチャンスを迎えていた。打席には5番・大山悠輔。大山は2回に左前打を放っている。一打出れば同点、長打なら逆転という場面だ。

 1ボールからの2球目を大山が待っていた、そのとき。山崎はクルリと反転、二塁にけん制球を投じた。これがピシャリはまり、二走・野口恭佑は手から帰塁しようとしたがアウト。文句のつけようのないプレーでチェンジになった。

 これで一気に流れは巨人に傾く。仕切り直しの6回、大山は空振り三振。5回の状況のまま打っていても結果は同じだったかもしれないが、もちろん、過程が違う。そこを厳しく指摘したのは外野守備走塁コーチ・筒井壮だ。

 「あのプレーの持つ重要性ですよね。あそこでクリーンアップの結果を見ずに終わるのは絶対、避けたいところ。野口もボ~ッとしていた訳ではないけれど圧倒的に(山崎に)“キレ負け”でしたね。そこは大いに反省してほしいし、本人ともそんな話はしました」

 野球は流れのプレーだ。1つの結果がそれで終わらず、次につながっていく。だからこそ最後まで気を抜けないし、細心の用意がいる。1軍に足を踏み入れたばかりの野口には厳しい経験だが、これを骨の髄まで染み渡らせてほしい。次代を担う選手だからこそ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)