【函館記念回顧】ホウオウビスケッツがエリモハリアー以来の巴賞から連勝 勝因は馬場と仕掛けにあり

AI要約

函館記念は年によって時計が遅い場合もあるが、良好な馬場状態では速い時計も期待できる。

ホウオウビスケッツが巴賞を逃げ切って函館記念で優勝し、折り合いや戦術面で巧みな勝利を収めた。

マインドユアビスケッツ産駒のJRA重賞初制覇で、持続力に長けた性格を見せ、今後の活躍に期待が高まる。

【函館記念回顧】ホウオウビスケッツがエリモハリアー以来の巴賞から連勝 勝因は馬場と仕掛けにあり

函館最終週の函館記念は開催を通して傷んだ洋芝で行われる差し比べを連想する。もちろん2分を超える決着時計になる年が多く、オープン馬ならどの馬でも、走れる時計になればゴール前は激戦になる。だが、運よく開催中に雨に見舞われないときは、たとえ開催最終週の函館であっても、時計は開幕当初よりわずかに遅くなる程度で収まる。傷みが早い洋芝もJRA馬場造園課は丁寧に手入れし、良好な状態を保つ。世界に誇る馬場管理技術の賜物だ。

今年、朝一番の芝の馬場発表が良以外だったのは7月7日の1回。それも稍重。最終日のクッション値8.3は今年の函館開催で最高値であり、良好な馬場のもと、函館記念は行われた。

勝ち時計1:59.2は良馬場に限れば特筆するものではない。最高の馬場状態であることを踏まえると、もう少し速い時計が計時されてもいい。1:59.2より速い函館記念は、2000年以降、2021年トーセンスーリヤの1:58.7、2013年トウケイヘイローの1:58.6など5回。逃げ切り2回、好位抜け出し3回と、高速決着になると例年のような差し比べには持ち込めない。速い時計が出るという予測が立った時点で、狙いは先行型に絞らなければいけなかった。

勝ったホウオウビスケッツは巴賞逃げ切りから中1週。斤量0.5キロ増で決して楽な状況ではない。巴賞勝ち馬の函館記念制覇は1986年以降、1990年ラッキーゲラン、2005年エリモハリアーに次ぐ3頭目。19年ぶりの快挙だ。そして、同じく1986年以降の記録で巴賞を逃げ切った馬の函館記念制覇となると、ホウオウビスケッツが初となる。

巴賞を逃げ切った馬はまず間違いなく函館記念で執拗なマークに遭い、楽をさせてもらえない。この点、ホウオウビスケッツは巧みに包囲網をかいくぐった。伏兵のアウスヴァールがハナを奪いに来ると、ホウオウビスケッツはあっさり引いた。元来、折り合いに課題を抱えており、前走も内心は逃げたくなかったはず。だが、函館記念につなげるには賞金加算が必要だったため勝負に出た。当然、逃げた直後なので、折り合いが難しくなるのではという懸念もあったが、アウスヴァールを追いかけすぎない位置でギリギリ折り合いをつけた。この2戦をあわせて岩田康誠騎手の手綱が冴えた。

もう一点、3コーナー手前の残り800mからアウスヴァールが背後のホウオウビスケッツを引き離さんとラップをあげた。勝負所であり追いかけたくなるところをぐっと我慢させ、4コーナー手前から追い上げたことで、上がり600m35.3でまとめてみせた。脚の使いどころもホウオウビスケッツを知り尽くした鞍上だからこそ。アウスヴァールを追い、早めにレースを動かしていたらラスト200m12.0よりかかったはずだ。

マインドユアビスケッツ産駒はこれがJRA重賞初制覇。昨年のブリーダーズCクラシック2着デルマソトガケなどダートに強い種牡馬だが、米国ダートGⅠ馬らしく、スピードの持続力に長けている。軽い芝の瞬発力勝負を避け、持続力勝負に持ち込めれば芝でも重賞を勝てることを証明した。今回は前後半1000m59.6-59.6。前後半が等しい精緻なラップ構は強みを生かせる。マインドユアビスケッツ産駒の特徴を示す大きなヒントになった。今後は先行意欲を感じる産駒の好走が目立ってくるのではないか。