元ヤクルト左腕加藤幹典氏が山梨にプロチームを作った 現役引退後は「自分が何者か探す10年」

AI要約

元ヤクルトの加藤幹典氏(39)が、国内独立リーグのBCリーグに新チーム「山梨ファイアーウィンズ」の正式加盟を発表。

加藤氏は選手引退後、営業職や起業を経て、今回のチーム創設に携わる。プロ野球選手のセカンドキャリアとして注目される存在。

現役時代の苦労や成長過程を振り返りつつ、自身が感謝される活動を続ける動機について語る。

元ヤクルト左腕加藤幹典氏が山梨にプロチームを作った 現役引退後は「自分が何者か探す10年」

 気温35度と甲府盆地に熱がこもった4日、元ヤクルトの加藤幹典氏(39)が再びフラッシュを浴びた。

 国内独立リーグのBCリーグに、来季から「山梨ファイアーウィンズ」が正式加盟することがこの日、発表された。加藤氏は準加盟の今季は監督職もしつつ、球団代表としてチームの創設に深く携わった。

 プロ野球選手のセカンドキャリアが注目される昨今、独立リーグとはいえ、ついにプロ野球チームを作る“元プロ”まで現れた。しかも元ドラフト1位左腕。

 「いえいえ、自分自身についてのことははそこまで感じないですよ。山梨県民の皆さんの野球への思いがとても強くて、やっと正式加盟をいただいて安心しているところです」

 照れながら言う。慶大からドラフト1位入団も肩痛に悩み、通算わずか1勝。27歳で現役引退した。そこからの10年少々。「自分が何者か、っていう10年でしたね。そこはプロ野球を経験した皆さんが苦労するところで。何がやりたいか、何をできるのか、それを探していた10年でしたね」。ヤクルト本社で営業職も経験し、その後起業。参考書もないままここまでやって来た。

 それでは、加藤幹典さんは何者でしたか?

 「何者でしょう。いや、もう、やっぱりひと言で言うと、感謝されることをやりたいなって。そこが一番のここまでのモチベーションだったと思います」

 6月にはBCリーグ選抜-西武3軍の運営を担った。甲府の山日YBS球場に1500人のファンを呼んだ。選手に歓声を送り、ファウルボールを追いかける子どもたちの姿に、感極まった。「うるっとしましたよね。野球で見せる側だったのが、スタッフとして見てもらう側になって。現役の時とは感動が全然違いましたね」。

 川和(神奈川)のプロ注目左腕だった夏から、21年が過ぎる。「どうしようもない…子どもでしたね」と笑う。広島からも高い評価を受けていたが、よりアスリートとしての学びを深めるため、進学を決断。「ピーキング理論を学びたいんです」と夢を語っていた。AO入試の2次合格で慶大に滑り込んだ。

 「そういえば」

 苦笑いする記憶。神奈川大会の開会式、炎天下で長時間立っていた。知らずと下半身に負担がかかり、翌日の法政二戦で両足がつる事態に。スカウト陣も視察する試合でとことん打ち込まれ、連続被安打の県記録まで作ってしまった。

 「本当にみんな、万全で試合に臨んでほしいですね。体に気をつけながら、後悔のないように。あ、そういえば今年の川和のエース、2年生なのに143キロ投げるみたいですね」

 後輩に期待を寄せつつ、あれから21年。当時の39歳像は。

 「本当はプロ野球選手としてまだ活躍しているつもりでした。メジャー挑戦? それは全然なかったですよ」。

 青春に描いていた夢とは少し違うけれど、自分でプロ野球の世界を作った。少し貫禄はついたけれど、あっぱれな仕事をしてみせた。【金子真仁】