今季2勝目の小椋藍がMoto2タイトルにこだわる本当の理由と、アライユーザーなのに「MTヘルメット」チームで走れるわけ《来季のMotoGP昇格は?》

AI要約

小椋藍がオランダGPでMoto2クラスで2勝目を挙げ、タイヤのコントロールやアクセルワークの改善が勝因だった。

アルデゲルやガルシアとの激しいバトルの中、小椋が最後まで頑張り、勝利を手にした。

アッセンの歴史や伝統、小椋の移籍やヘルメットにまつわるエピソードに注目が集まった。

今季2勝目の小椋藍がMoto2タイトルにこだわる本当の理由と、アライユーザーなのに「MTヘルメット」チームで走れるわけ《来季のMotoGP昇格は?》

 6月30日にアッセンで開催された第8戦オランダGPで、Moto2クラスを戦う小椋藍が今季2勝目を挙げた。今季初のフロントロー獲得となった2番手から好スタートを切ってトップグループに加わると、レース後半の16周目にトップに浮上。そのまま22ラップまで逃げ切り、2位のフェルミン・アルデゲルに0.571秒差をつけて、第6戦カタルーニャGP以来2戦ぶりに優勝した。

 勝因はアッセンが複合的ではない単調な中高速コーナーが続くレイアウトで、小椋の走りに合っていること(小椋はアッセンで過去2年連続2位)。そして、開幕以来苦しんできた予選でしっかりタイムを出せたこと。さらに今季はMoto2クラスのオフィシャルタイヤがダンロップからピレリに変わったのだが、そのタイヤマネージメントが向上したことも挙げられる。

 ダンロップに比べてピレリはグリップが高く一発のタイムは出るが、レース後半になるとグリップ力が落ちてタイムも落ちる。シーズン序盤の小椋はそれに苦しんで来たが、ここ数戦はタイヤのコントロールがうまくなってきた。なにをどう変えてきたかは小椋だけが知る秘密の部分だが、彼は少しだけ語ってくれた。

「フリー走行や予選と違って決勝では走りを変えている。減速時もタイヤを傷めないように気をつかっているけど、一番の違いはアクセルワーク」

 オランダGPはその甲斐あっての勝利だった。レース後半になって優勝争いは3人に絞られたが、チームメートで総合首位のセルジオ・ガルシアはタイヤの消耗でペースを落とした。昨年のシーズン終盤戦、破竹の4連勝(通算5勝)を達成し来季のMotoGP昇格とドゥカティ入りが決まっているアルデゲルは、15周目まで安定したタイムでトップを走ったが、「トラック・リミット」違反でロングラップペナルティが科せられ(コースの境界線を越えての走行2回で、コースの一部に設けられた遠回りのコースを走らなければならない)、小椋の先行を許すことになった。

 小椋は予選を2番手で終えたとき、「得意のアッセンで予選がだめだったらどこでタイムを出すんだって思っていた」と語り、決勝を前に「今回はフェルミンが速いし、序盤からフェルミンが逃げると思う。ついていくだけ」と語っていた。決勝はその通りの展開となり、戦いを終えた小椋は「もしフェルミンのロングラップがなければ追いつけなかったかも。でも、今大会は週末を通じてずっと速く走れたことが最大の勝因」と3日間を振り返った。

 オランダGPの舞台となるアッセンは、1949年に始まり今年で76年目を迎えるグランプリの歴史の中で、唯一同じサーキットで開催されてきた伝統ある大会である。2020年の新型コロナによるパンデミックで一度だけ開催中止となったが、今年で75回目の開催となった。

 この76年の間にコースは何度も改修され、その時代に合ったサーキットへと生まれ変わってきた。コースの安全性はもちろん、サーキットを取り巻く施設や環境、道路のアクセスも素晴らしく、10万人を超える観客がストレスなく訪れることができる世界一のサーキットでもある。伝統とは何かということを教えてくれる素晴らしい大会で、小椋は見事優勝を果たしたのだ。

 今年はホンダ・チーム・アジアからスペインのマドリードに拠点を置く「MTヘルメット-MSI」に移籍。チームのメインスポンサーはMTヘルメットだが、「レースをするための道具で唯一変えたくないと思っているのがヘルメット」と小椋は、レースを始めたときから日本のアライヘルメットを着用している。昨年のMSIとの移籍交渉でも「アライをかぶれることが移籍の条件」となったが、今年からMoto2に参戦する新規チームのMSIは小椋の要求を呑んだ。チームとして1年目のMSIが何よりも欲しいのは結果であり、だからこそMSIは小椋の獲得に動いたわけだが、メインスポンサーのヘルメットメーカーと違うヘルメットをかぶるというのは異例である。