愛工大名電野球部に入部した初の女子選手を直撃「練習はきつい」と感じつつも「マネジャーの仕事も全部楽しい」二刀流で夢に挑戦する口田美羽

AI要約

口田美羽が愛工大名電高校硬式野球部に初の女子選手として入部し、新たな風を巻き起こしている。

口田は選手としてもマネジャーとしても活躍し、甲子園でマネジャーとしてスコアをつける夢を追い求めている。

口田は軟式野球から硬式野球に挑戦し、将来は高校野球女子選抜と対戦する夢を持っている。

愛工大名電野球部に入部した初の女子選手を直撃「練習はきつい」と感じつつも「マネジャーの仕事も全部楽しい」二刀流で夢に挑戦する口田美羽

◇羽ばたけ中部勢

 愛工大名電高校硬式野球部に今春、1955年の創部以来初の女子選手として入部した口田美羽(1年)。春夏通じて25度の甲子園大会出場を誇る名門校に、新たな風を吹かせている。マネジャーとの二刀流で、それぞれの夢に挑戦する。

 「選手としてやってみないか」。1月下旬、倉野光生監督(65)の一声で全ては始まった。

 昨夏の愛知大会で3連覇し、3年連続で甲子園大会に出場した愛工大名電。口田は「甲子園でマネジャーとしてスコアを書くのが夢。強い名電でかなえられたら」と受験した。合格して、倉野監督へあいさつに行くと、意外な言葉が返ってきた。少し悩んだが、「名電の選手と練習できる機会はなかなかあることじゃない。挑戦したい」と一歩を踏み出した。

 1歳下の弟が野球を始めたのを機に、「私もやりたい」と小学2年の秋から軟式チームに加入。当初は水泳も習っていたが、4年からは野球一本に絞るほど夢中になった。中学では女子軟式チームに入り、野手として全国大会8強に貢献した。ただ、「チャンスで三振に終わった試合があって、打てなかった悔しさがあった」と振り返る。

 憧れのチームでマネジャーになることを夢見て、選手としては中学で一区切り。そんな中、もう一度グラウンドで輝くチャンスをもらった。しまったグラブを取り出し、弟とキャッチボールをするなど入部に備えた。

 今は平日の週2回は全体練習に加わり、土日はアップのみに参加してマネジャーの仕事をしている。軟式から硬式に変わり、練習を共にするのは強豪校の男子部員。「体力の差もあって練習はきつい」と感じつつも「マネジャーの仕事も全部楽しい」と充実感が上回っている。

 今のルールでは、女子選手は地方大会や甲子園大会に出場することはできない。倉野監督は「部員たちの目標はレギュラーになる、甲子園に出ること。口田はそれをかなえられなくても頑張る尊さ、『野球が好き』という原点を他の部員に見せてくれている」と話す。

 マネジャーとして甲子園へ行くという目標とは別に、もうひとつの夢がある。高校の大先輩で米大リーグなどで活躍したイチローさんとの対戦だ。2021年から毎年行われているイチローさん率いる草野球チームと高校野球女子選抜との交流試合。「中1のときに知ってからずっと出たかった」と選抜メンバー入りを練習のモチベーションにしている。

 今は硬式球に慣れるため、練習内容に制限がある。ノックは他の選手の動きを見ることから始め、打撃もティー打撃が中心。「打撃練習もノックもみんなと一緒の練習ができるようになりたい」。大きな夢に向かい、目の前の壁をひとつずつ乗り越えていく。 

 ▼口田美羽(くちだ・みう) 2008年7月22日生まれ、名古屋市緑区出身の15歳。小学2年の秋から地元の軟式チーム「サンデージュニア」に入団。中学は愛知県碧南市の女子軟式チーム「愛知アドバンス」でプレーした。守備位置は主に外野と一塁。今春愛工大名電高に入学し、選手兼マネジャーとして硬式野球部に加わった。