“拠りどころの甘さ”も、近江が初のインハイ予選連覇。強豪校への新たな一歩

AI要約

近江高が初のインターハイ予選連覇を達成し、全国大会出場を決めた。

立命館守山高との試合では1-0で勝利し、選手権準優勝校の偉業を達成した。

近江高は新たな歴史を築き、全国大会での成功に向け期待が高まっている。

“拠りどころの甘さ”も、近江が初のインハイ予選連覇。強豪校への新たな一歩

[6.8 インターハイ滋賀県予選決勝 近江高 1-0 立命館守山高 布引運動公園陸上競技場]

 近江が初のインターハイ予選連覇。令和6年度全国高校総体(インターハイ)滋賀県予選決勝が8日に東近江市総合運動公園布引陸上競技場で行われた。選手権準優勝校の近江高が1-0で立命館守山高に勝利。2大会連続4回目の全国大会出場を決めた。

 選手権で華麗なテクニックや運動量を賞賛される戦いで初の決勝進出、準優勝。チームの歴史を大きく塗り替えた近江に対して、次は選手権優勝、インターハイでの上位進出によって新たな歴史を築くという期待の声もある。

 もちろん、それを目指していくが、前田高孝監督はまず米子北高(鳥取)や青森山田高(青森)、大津高(熊本)のように都道府県予選で負けない、苦戦しても粘り強く全国大会に出続けるチームになっていくことを求める。「(連覇を)何十年やってる強豪のチームは凄い。新しい、ホンマに近江の歴史っていうのは、多分そういうものが出てこないと難しいです」。この日、苦戦しながらも1-0で勝利。注目校は、インターハイ滋賀県予選で初の連覇を果たした。

 試合は、男女共学化した2006年の創部から、県決勝初進出の立命館守山が攻守にアグレッシブな戦いを披露する。吉田貴彦監督は「近江とやる時は後ろでボール繋いで陣形を前に来られるのが嫌なので、『前から行こうよ』と。両サイドが上がる時間を作られたくないっていうのが一番の狙いでした」。MF脇拓実(3年)らがドリブルで仕掛け、右SB平尾新(2年)のロングスローやFW氷見亮陽主将(3年)のCKからゴールへ迫る。

 挑戦者の立命館守山が勢いを持ってゲームを進めたが、吉田監督が「やっぱり失点は調子よく攻めていた時だった。“背伸び”してたんだろうなと」と指摘したように、入りの良さが一瞬の隙を生んでしまう。前半10分、近江は10番FW山本諒(3年)が右中間からスルーパス。これでMF松山大納(2年)が抜け出し、右足シュートをファーのネットへ突き刺した。

 1チャンスをモノにした近江はその後、DFリーダーのDF高本翼(3年)が持ち上がりやサイドチェンジを見せたほか、MF市場琉祐(2年)が係わっての崩しなどにチャレンジ。ボールを動かし、CKを獲得していたが、前に出てくる相手にボールを引っ掛けられ、そのまま攻め込まれるようなシーンが増えてしまう。

 立命館守山は20分、左SB片岡大知(3年)が敵陣でのインターセプトから左足一閃。これは相手DFにブロックされたが、26分にも片岡が対角のロングパスを右サイドへ通す。相手DFが寄せて来る中で氷見が残し、MF宮田夢大(3年)がクロス。これにFW李川晃瑛(2年)が飛び込む。2年生中心のDF陣含めて技術が安定しているチームは、その後もボールを持てば仕掛ける李川のドリブルなどでゴールを目指した。

 そして、後半10分には左の李川がドリブルで仕掛け、ラストパスのこぼれを宮田が左足ミドル。強烈な一撃がGKの頭上を越えたが、ボールはクロスバーを叩いてしまう。立命館守山は強度で負けず、中盤の攻防でボールを奪い切っていたが、吉田監督は「取り切って、取り返されていた」とシュートに結びつける回数を増やせなかったことを残念がる。

 対する近江は、豊富な運動量で奪い返しを見せるMF廣瀬脩斗(3年)やMF伊豆蔵一惺(3年)、後半途中に右サイドから中央へ移ったMF河野翔空(2年)が相手の速攻を遅らせ、3バックの中央を担う高本が相手のクロスに落ち着いた対応。また、DF藤田准也(2年)が高さを発揮したほか、選手権準優勝メンバーのGK山崎晃輝主将(3年)がゴール前で存在感を見せていた。

 一方で、前田監督はボランチが係わっての攻撃や、3バックの選手がドリブルで運んだり、WBが中へ割って入ったりする動きが少ないことを指摘。準決勝(対綾羽高、2-1)ではよりボールを持って攻撃することができていたというが、決勝では緊張もあったか、パス中心の戦いになっていた。

「(昨年からメンバーが大きく入れ替わり、)まだ経験がない中で『何に頼るか』って言ったら、多分、最後、技術のはずなんですけど。それがやっぱりこういうところになった時に発揮できないっていうのが、多分、今の現状やと思います。ボールを離そう、離そう、離そうと。『最後、拠りどころにするところが甘かったよね』っていう話だった。それは僕の反省です」と指揮官。後半のシュートは、終了1分前に左WB中江大我(2年)のパスから山本が左足で狙った1本のみで、試合を通じてもシュート2本に終わった。

 それでも、1点リードの試合終盤にバタつかなかったことも確か。立命館守山のセットプレーを跳ね返すなど、相手が攻勢に出る機会をほぼ与えずに1-0で試合を締めた。追われる立場となった中での戦いだったが、昨年の卒業生が見守る前で優勝。選手たちに満足感はなかったものの、素直に優勝を喜んでいた。

 山崎は「正直なところで言ったら、やっぱり近江高校として、やっぱり滋賀県タイトルはもう絶対落とせないゲームになってきてると思うんで。チームとしてもそれだけ大きなチームになってきてると思うんで、やっぱりプレッシャーってのは凄くありました」。昨年とは異なる世代で、別のチーム。選手権の好成績によって、ミスできない、負けられないというプレッシャーはより高まったが、勝ち切ったことで近江は一つ成長した。

 ここからインターハイまで1か月半の期間がある。前田監督は「メンタル面も踏まえて。ここからもう1回、全国ではやれるように」。高校サッカーにおける3年生のパワーを信じる指揮官は、この日先発6人のみだった3年生の奮起にも期待していた。

 注目の全国大会は一戦必勝の姿勢で戦う。「今年の目標は一戦必勝を掲げている。優勝とかベスト4とかそういう目標は立ててなくて、一戦一戦戦っていく中での結果だと思っています」と山崎。どんな環境でも自分たちの“拠りどころ”技術力を発揮できるように日常で磨き、全国大会の一試合一試合で披露する。