世界に遅れる日本の人工妊娠中絶 ~かかりつけ医持とう~

AI要約

日本の中絶方法が時代遅れであることから、経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」の国内承認から1年が経過したものの、利用はまだ限定的である

日本では手術が主流であり、掻爬法による手法が一般的であったが、欧州では薬物による中絶が主流である

フランスでの中絶手術を見学した際に、日本の手法が時代遅れであることに気づく。ソフトチューブによる吸引法の導入により、合併症のリスクが減少した

世界に遅れる日本の人工妊娠中絶 ~かかりつけ医持とう~

 経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」の国内承認から1年が経過した。取り扱いを始めた医療機関はまだ限定的で、入手困難な地域もあるなど利用体制が整ったとは言えない。

 人口妊娠中絶に詳しい苗穂レディスクリニック(札幌市)の堀本江美院長が、日本の中絶方法がいかに時代遅れだったか、現在の状況下で女性たちにはどのような選択肢があるのかなどを解説する。

 ―日本では人工妊娠中絶に薬剤を用いる医療機関が限られるということでした。ほとんどは手術ですか。

 表のように、欧州では薬剤による人工妊娠中絶が9割を超える国もありますが、日本ではまだ手術がほとんどです。その手術にしても、2016年にソフトチューブを用いた手法が認可されるまでは、搔爬(そうは)法といって、棒状の器具で子宮口を開く前処置を行ってから、金属製の器具を入れて子宮の内容物をかき出す方法が長年行われてきました。

 8年前にフランスで中絶手術を見学した時、日本の状況を話すと「今どき、そんなことをしているのか」と笑われました。そして、その時に見たソフトチューブによる吸引法だと、前処置がいらず、局所麻酔で簡単にできることに衝撃を受けました。術後の出血も痛みも掻爬法とは比較にならないほど少ないのです。

 経腟分娩(ぶんべん)の経験がある人の子宮口はすぐに開きますが、未産婦あるいは出産経験があっても計画的に帝王切開を行った人の子宮の入り口は硬く、2~3ミリの器具を通すのがやっとという人もいます。このため、掻爬法で器具を子宮内に入れるには、子宮口を広げる前処置が不可欠でした。また、掻爬法では医師が手探りで子宮の内容物をかき出すのですが、子宮のカーブの仕方や方向は個人差が大きく、子宮に穴が開いたり、傷が付いたりして不妊になるケースもありました。

 ソフトチューブによる吸引法が行われるようになってからは、そうした合併症のリスクが避けられるようになりました。硬い器具でかき出すよりチューブで吸引した方が、体へのダメージが少ないのは当然といえば当然です。