なんと、米軍が耳のツボに「鍼」を刺す治療を行っていた…! 取材ディレクターが基地で見た「光景」

AI要約

米軍が鍼治療を取り入れた理由やその効果について紹介。

鍼治療を行う際の特徴や取り入れられた具体的な方法について述べる。

鍼治療のメカニズム研究において、脳の血流増加や痛み感覚調節に関する成果が示されている。

なんと、米軍が耳のツボに「鍼」を刺す治療を行っていた…! 取材ディレクターが基地で見た「光景」

 私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば「手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ」「ツボに特徴的な神経構造が発見された?」「漢方薬が腸内細菌のエサになっている?」など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。

 東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、米軍が行う鍼治療について紹介したいと思います。

 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

 筆者(山本)が東洋医学の取材を始めたきっかけのひとつは、「米軍が鍼治療を行っている」という驚きの情報でした。早速取材を申し込んで訪ねたのは、首都ワシントン近郊にあるアンドリュース空軍基地。有名な大統領専用機・エアフォースワンの本拠地でもある広大な基地で私たちを迎えてくれたのは、米空軍で鍼治療を最初に始めた医師、リチャード・ニエムゾー博士です。

 2001年に、耳の5つのツボを使って痛みを緩和するという「Battlefield Acupuncture(戦場鍼治療:BFA)」と呼ばれる方法を発表し、世界的に注目されました。この方法で使う鍼は日本や中国の鍼とは違い、長さ3ミリメートルと短く、鍼の先端は“矢じり”のような形をしていて1ミリメートルほどの太さがあります。刺した後も数日間そのままにしておくと言い、その見た目は、まるでピアスをしているような感じです。取材では、腰痛に悩む補給隊員の治療に立ち会いましたが、両耳にそれぞれ数本の鍼を刺しただけで痛みが大幅に軽減したと話していました。

 それにしても、なぜ米軍で鍼治療を行うのでしょうか。

 ニエムゾー博士によると、戦場でのケガや疾患による痛みを素早く簡単に処置するために、鎮痛薬以外の治療の選択肢として鍼治療に注目したと言います。さらに、手足の裾をまくったり、服を脱いだりする必要がない耳のツボを使えば迅速に治療が行えると考え、それまで効果があるとされていた多数の耳ツボの中から5つを選び出したそうです。

 彼らが行った治療メカニズムの研究では、この5つのツボに鍼を刺すと脳の血流が増加することが確認され、耳ツボへの鍼刺激によって脳の痛み感覚を調節している可能性があると言います。そして現在、BFAは米軍以外でも広がっており、鎮痛だけでなく精神疾患などの治療に応用する研究も進められているのです。

----------

----------